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スカーレットの邂逅編36 ページ37

私の力作に、失礼なことを言うと安室さん。

「どう見ても安室さんじゃないですか」

「……顔が真っ赤に塗りつぶされてますけど」

「だって安室さん、肌が褐色だから」

「大怪我負ったみたいになってるんですが」

「これは肌の黒さを表現してるんですよ、やだなあ」

そう言って、オムライスの下に「あむろさん」と書いた。

「できたー! いい出来です」

「じゃあ、僕も描いてもいいですか?」

「えっ? いいですけど…」

安室さんの瞳が、悪戯っ子のようにきらきらと輝いた。
一瞬、見たことのない安室さんの表情に、どきりとする。

なんだ。
安室さん、こんな顔もできるんじゃない。いつもお澄まししてるけど。

安室さんの絵は、なかなか上手かった。手先が器用なのだろう。
でもめっちゃ可愛く描いてくれてる。目とかこんなにパッチリしてない。

「私、こんなに可愛くないですよ」

「え? 誰もAさんなんて言ってませんよ?」

うっ、と言葉に詰まる。
何それ。やっぱ安室さんってタチ悪いよ。
かああ、と顔が赤くなって思わず俯いたら、くすくすと笑い声が降ってきた。遊ばれてる。

「冗談ですよ」

「……また冗談ですか?」

「そんなに怒らないで。Aさんが揶揄い甲斐があるので、つい。
僕に大怪我を負わせた仕返しですよ」

私の描いたオムライスを指差して、ウインクする安室さん。

「それに、可愛いですよ」

「はい?」

「可愛いですよ。Aさんは」

にっこりと安室さんが微笑んでいる。
私といえば、今度こそぽかん、としてまじまじと安室さんを見つめた。穴のあくほど。

「……そ、そんなことないです」

「どうしてです? もっと自信を持ってください」

安室さんの言葉には答えずに、スプーンを手に取った。

「なんか、勿体ないなぁ。せっかく描いたのに」

「Aさん?」

「安室さん、もうやめて下さいね」

はい? と首をかしげる安室さん。

憎らしいな、なんて。
憎らしいほどカッコいい。こんなカッコいい人、見たことない。
ダメだ。安室さんは私が好きになっていい人じゃない。だけど。命が危ないところを助けられて、優しく看病してもらって、こんなこと言われたら。誰だって。あなたみたいなステキな人にこんなことされたら。そんな風に言われたら。誰だって、どんな女の子だって。


「そういう冗談は好きじゃないです」

安室さんがすっと笑いを引っ込める。
私は黙ってオムライスをスプーンで割って、そっとすくった。

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0 - ここのスコッチと言うかヒロがどちらかというか松田っぽい気がする… (2022年6月11日 4時) (レス) id: b95582035d (このIDを非表示/違反報告)
かなえ - 沖矢さんが東京を知らない描写がありますが、米花町は東京都にある設定ですよ? (2020年5月17日 15時) (レス) id: 3ecbb3d6aa (このIDを非表示/違反報告)
さち - 好きです。おもしろいです。よろしくお願いします。 (2019年10月23日 15時) (レス) id: 5f335610e5 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - ミツキmitsukiさん» ありがとうございます!! 降谷さんかっこいいです (2018年4月22日 20時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
ミツキmitsuki(プロフ) - とっても作品、おもしろいです!あと、わたしも安室さんより降谷さん派です!かっこいいですよね!! (2018年4月22日 10時) (レス) id: 3d854cbce7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:海星 | 作成日時:2018年4月5日 19時

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