検索窓
今日:46 hit、昨日:698 hit、合計:2,069,976 hit

スカーレットの邂逅編34 ページ35

まるでモデルルームみたいに整理整頓された部屋。だけど殺風景すぎて生活感が全くない。

ぱさり、と肩までかかっていた毛布が落ちて、キッチンにいた安室さんが振り返った。

「気がつきましたか、Aさん」

「あ、安室さん……あ、あの、ここは…?」

「あ、僕の家です。Aさんトラックの中で気を失っていたので、僕の家に運びました」

いや、そんな『引っ越しの荷物、運んでおきました』みたいな口調で言われても。笑顔が大変爽やかでいらっしゃいますけれども。

「あ、そ、そうなんですね〜…」

「ええ」

にっこりすると、安室さんは何故か私の方に近寄ってきた。思わずソファの端ににじり寄るという、失礼極まりない態度をとる私に、安室さんがくすくす笑う。

「いきなり他人の家で目覚めたら驚きますよね。他意はないので安心してください」

「ああ、いや、そういうつもりではっ」

慌てて居住まいを正す私。

「安室さん、助けてくださってんですか? あの暗号が解けたんですねっ?」

「ん? いえいえ。僕はたまたま通りかかったんですよ。トラックの中で子供達が叫んでいたので、気がついたんです」

そ、そうだったのか……すごい偶然だなぁ。

「どちらにしても助かりました。ありがとうございます。安室さんのおかげです」

「とんでもない。それより体は大丈夫ですか? 指先が凍傷になりかけてましたから……」

そう言って、私の手をそっと握る安室さん。つー、と指先をなぞられて、ふいに心臓がうるさくなってきた。
安室さんが丁寧に、私の指先をなぞって確認していく。恥ずかしい。こんなことならオシャレなネイルサロンに通って、爪のお手入れをしているんだった……そんなお金ないけど。

「大丈夫そうですね」

「あ、安室さんが助けてくれたおかげです」

「そのことはもういいですよ」

安室さんはくすりと笑って、私の頭を撫でた。

「それより、さっきのこと覚えてませんか」

「えっ? さっきのこと?」

安室さんの瞳が、じっと私を覗き込んでいる。いつになく熱を帯びたその光に、さっきとは比べものにならないほどに、胸の音がうるさくなった。

「な、なんのことでしょう……」

「一度、目を覚まされたんですよ。覚えてませんか?」

「そ、そうだったんですね……ごめんなさい。覚えてないです」

そうですか、と安室さんは呟いた。
その声がひどく悲しげだったので、何かまずいことを言ってしまったのか、と思う。

スカーレットの邂逅編35→←スカーレットの邂逅編33



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (644 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1950人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

0 - ここのスコッチと言うかヒロがどちらかというか松田っぽい気がする… (2022年6月11日 4時) (レス) id: b95582035d (このIDを非表示/違反報告)
かなえ - 沖矢さんが東京を知らない描写がありますが、米花町は東京都にある設定ですよ? (2020年5月17日 15時) (レス) id: 3ecbb3d6aa (このIDを非表示/違反報告)
さち - 好きです。おもしろいです。よろしくお願いします。 (2019年10月23日 15時) (レス) id: 5f335610e5 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - ミツキmitsukiさん» ありがとうございます!! 降谷さんかっこいいです (2018年4月22日 20時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
ミツキmitsuki(プロフ) - とっても作品、おもしろいです!あと、わたしも安室さんより降谷さん派です!かっこいいですよね!! (2018年4月22日 10時) (レス) id: 3d854cbce7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:海星 | 作成日時:2018年4月5日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。