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スカーレットの邂逅編32 ページ33

「安室さんっ、Aお姉さんが……」

安室さんがコンテナの中からAさんを横抱きにして運び出す。

「凍傷か……もう少し遅かったら危なかったな。彼女は僕が預かろう」

「で、でも安室さん…」

「心配しないで」

にこりと微笑まれ、ぐっと喉に詰まる。ここは安室さんに任せた方がいいか? でも安室さんは……

「安室さん! 博士のお家に寄って行ったら? お姉さんもそこで暖めてあげたら……」

「いや、僕は遠慮しておくよ」

首を横に降ると、自分の上着をAさんの肩にかけ、その体をそっと後部座席に寝かせると、安室さんは車に乗り込んで去って行った。


◇ ◇


寒い、冷たい。

指先の痛みは、もはや感じなくなっていた。
吐く息が凍りつき、喉まで死んだように冷たくなっている。

もうだめだ、と思い最後の意識が滑り落ちようとした時、誰かの暖かな腕に抱きしめられた。


Aさん______

A、さん_______

優しく落ち着いた声が、私の凍りついた鼓膜を溶かすように語りかける。

「Aさん…」

重たい瞼をかすかに開けると、じっと安室さんが覗き込んでいた。

「あ、…む…」

「大丈夫ですか? 僕のこと、分かります?」

「あむ、あ、あむろ…さん…」

そうです、と微笑んで、暖かななにかをそっと口元につけられた。

「白湯です。飲むと楽になりますから」

安室さんが背中を支えてくれる。そっと口に含むと、暖かな液体が体の中に染み込んで、じょじょに氷が溶けていくような心地がした。

「大変でしたね」

「あ、はい……」

「もう大丈夫ですよ」

安室さんがそっと私の額に自らの額を合わせる。触れ合った部分が暖かくて、ただただ安心したのか、気持ちよかったのか。
ぽとり、と透明な涙が流れ落ちる。
安室さんは優しくそれを拭ってくれた。

「さむい、です」

「そうですね。もうすぐ暖かくなりますよ」

そっと抱きしめられ、毛布を肩にかけられた。
安室さんの規則正しい鼓動が聞こえてくる。広い胸の中に言葉にできない涙が頬を伝う。

もう何も考えられない、今は。

ただ、凍ってしまった自分の体が、安室さんの体温によってゆっくりと溶かされていく。

あむろさん、と呟いた。
いや、呟いたのだろうか。朦朧とする意識の中で、安室さんがくすりと笑った声だけが耳元をくすぐった。






「Aさん」_____、と。

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0 - ここのスコッチと言うかヒロがどちらかというか松田っぽい気がする… (2022年6月11日 4時) (レス) id: b95582035d (このIDを非表示/違反報告)
かなえ - 沖矢さんが東京を知らない描写がありますが、米花町は東京都にある設定ですよ? (2020年5月17日 15時) (レス) id: 3ecbb3d6aa (このIDを非表示/違反報告)
さち - 好きです。おもしろいです。よろしくお願いします。 (2019年10月23日 15時) (レス) id: 5f335610e5 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - ミツキmitsukiさん» ありがとうございます!! 降谷さんかっこいいです (2018年4月22日 20時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
ミツキmitsuki(プロフ) - とっても作品、おもしろいです!あと、わたしも安室さんより降谷さん派です!かっこいいですよね!! (2018年4月22日 10時) (レス) id: 3d854cbce7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:海星 | 作成日時:2018年4月5日 19時

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