検索窓
今日:7 hit、昨日:43 hit、合計:237,342 hit

episode81 ページ38

世良ちゃんは私のことは気にせず、空き家の庭をずんずん進む。
二階建ての家で、上に大きく張り出したバルコニーがあった。
中はもちろん真っ暗で、窓にも埃がかぶり、カーテンがしているため、部屋の様子は外からではわからない。

庭は雑草が伸びていたが、そこまで荒れているわけではない。

「なんか、妙だね…」

「あ、Aクンもやっぱりそう思う?」

「これ、足跡、じゃない…?」

私の足元には、草が踏み潰されたかのような跡がある。
地面の土がわずかに抉れて、それが長い楕円形に見えなくもない。

「どうだろう。それっぽくも見えるね」

「変なの…幽霊って、足あったっけ?」

「通説は、ないね」

世良ちゃんは冷静な顔で切り返すと、躊躇いなく家のドアを開けた。

「……ハハッ! 鍵がかかってないや。管理会社の手が行き届いてないみたいだな」

そんなことを言いながら、家にずかずかと上がり込んで行く。
外で待っているわけにもいかず、私も後に続く。

玄関を入ってすぐ、手前に大きな額縁がかかっている。中には黒人の王様の絵がかかっていた。
なんだか高そうな絵だ。
ていうか、なんでこんなところに、まだ絵がかかっているのだろう? 引越しの時、持っていくのを忘れたのだろうか?

ぐるりと見回すと、廊下の奥がダイニングとキッチンのようだ。
二階へ続く階段は、リビングの手前にあり、暗闇に輪郭がぼやけている。

「普通の空き家だね」

どうかな、と前にたたずむ世良ちゃんが呟いた。

「えっ? どうかしたの?」

世良ちゃんはさっきから、動かない。じっと埃まみれの床を見つめている。
思わず近づいて覗き込んだ。

あっ、と声がもれる。


廊下に大きな靴の足跡が合計六つ、重なるようにして点々と続いていた。




「誰か住んでるの?」

言ってから、馬鹿な質問だと思った。けれど、世良ちゃんは「あながち間違いではないかもな」と不気味なことを言い出した。

「え、うそ……冗談だよね?」

「まあ住んでるわけではないだろうな。でも定期的にここに通ってる」

「通ってる?」

「たぶん、水曜日にね」

世良ちゃんはゆっくりと歩き出す。スマホの明かりをたよりに奥へ進むと、リビングに入る。

「見ろよ。ランプがある」

「あ、ほんとだ…」

電気ランプだ。世良ちゃんがスイッチを押すと、ぱっと明るくなった。

その瞬間、信じがたい光景が目の前に広がり、私と世良ちゃんはそろって小さく叫び声をあげた。

「な、なにこれ……!!!」

episode82→←episode80



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (259 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
634人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

常夏(プロフ) - コナンの小説でこんなに笑ったの初めてですwww (2021年11月3日 23時) (レス) @page16 id: 3853130063 (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - はじめまして。すっごく面白いくて一気読みしました!更新楽しみにしてます(^_^) (2019年9月28日 7時) (レス) id: 3d2c2e3b7f (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - あぁあぁあこの展開すきぃいいい! (2019年9月26日 20時) (レス) id: a9cd84d524 (このIDを非表示/違反報告)
名探偵銀ちゃん - 銀魂臭!最高ですネクロマンサー! (2019年9月16日 23時) (レス) id: b151daad25 (このIDを非表示/違反報告)
坂竹会長 - ページ4、rx-7のrxをRX-7にしたほうがいいと思います。なんか、、上から目線で申し訳ないです…… 失礼しました (2018年10月8日 17時) (レス) id: d6f7fc00e7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:海星 | 作成日時:2018年3月29日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。