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後楽園編5 ページ28

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 恵くんがいなくなった。
 よし。これで好きなだけ目の前のクソ上司に、罵詈雑言浴びせられる。


 私が五条さんに怒りをぶつけようと口を開きかけたとき、五条さんが私の服をちょいっと引っ張った。



「これさ、僕と前に出かけた時着てたやつじゃん?」

「…は?」


 五条さんが、そのでかい体に似合わない子供じみた仕草で、私の服を引っ張っている。


 そう______確かにそれは、以前、五条さんと「デート」に行く際に慌てて買いに走った、ブランド物のカーディガンだった。

 バッグも靴もあの日と同じ。

 あの日と唯一違うのは、今日はデニムじゃなくてスカートを履いてるってことだろうか。


 ………女の子って感じを出したかったから、ズボンじゃなくてわざわざスカートを選んだのだ。

 
 まあ五条さんのせいで、全部無駄になったけど。
 

 私は冷たく聞き返した。



「…それが、何か?」

「それが何か、じゃないよ。なに僕と出かけた時とおんなじくらいオシャレしちゃってんの?」

「どこにキレてるんですか? 話が読めないんでけすけど」

「あっそ。もういいよ。お前がブス専だってことはよく分かったし」

「あの人のこと、悪く言うのやめてください」

「は?」

「だから! 辰馬さんのこと悪く言うのやめてください!」


 五条さんが大きなため息をつく。


「あいつにさ、嘘ついてたよね?」

「…はい?」

「高校の教師だって。嘘ついてたでしょ? なんで?」

「なんでって……本当のこと言えるわけないじゃないですか。五条さんだってさっき言ってたでしょ。仕事内容を喋れないのに、結婚は無理だとか何とか」


 ムッとして言い返したが、五条さんはあっさり言い返してきた。


「違うでしょ」

「え?」

「嘘ついた理由。一般人に呪いのこと喋れないからじゃないでしょ」



 五条さんが射抜くように私を見た。
 私は自分でも何故だか分からないまま、視線をさまよわせた。


「違わなくないです。私は……」

「自分で分かってないんなら、僕が理由を教えてあげるよ。……信じてもらえないって思ったからでしょ?」


 五条さんはゆっくり私に近づいてきた。
 背をかがめて、私の耳元に口を寄せた。


「呪いのことなんて、信じてもらえないって思ったから言わなかったんでしょ。自分の話を信じてもらえないって思うような男と、結婚なんてしない方がいいんじゃない?」



 五条さんの低い声が、ぐさりと私の心をえぐった。




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海星(プロフ) - 呪われし君に捧ぐ3を改めて作り直しました。よろしくお願いします。 (2022年7月1日 22時) (レス) id: 1b892b7b06 (このIDを非表示/違反報告)
緋雪(プロフ) - 10点評価連打したい作品…ありがとうございます(;;) (2022年6月26日 19時) (レス) @page49 id: 3c54e1abfa (このIDを非表示/違反報告)
Mami(プロフ) - 海星さん» 流石先生やることが違います (2022年6月21日 21時) (レス) @page44 id: a64b7436ba (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - あるふぁさん» ありがとうございます!! すごく嬉しいです! 頑張ります! (2022年6月20日 10時) (レス) id: 1b892b7b06 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - Mamiさん» かっこいい恵書けてよかったです! (2022年6月20日 10時) (レス) id: 1b892b7b06 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:海星 | 作成日時:2022年6月4日 16時

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