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「は、はい。ですが……、学長はわたしの味方をしてくれました。それに、わたしのことを見て、勇敢な警察官だとおっしゃってくれました。嬉しかったです。本当に、嬉しかったです。ありがとうございました」
深く頭をさげる。
分厚いカーペットに視線を落としていると、ぽん、と肩をたたかれた。
「顔をあげなさい。まさかお礼だけを言いに来たわけではないんでしょう?」
……この人、降谷くん並みに鋭いなあ。
言い当てられて、ちょっと冷や汗がこぼれる。
おそるおそる顔をあげると、相変わらずにこやかな学長と目が合った。わたしは一瞬迷った後、思い切って口を開いた。
「両親に……、自分の好きな道を歩めと言われました」
「ふむ」
「学長にこんなことを言うのはとても失礼なことなのですが、わたしは自分から望んでこの道を選んだわけではないんです。
叔父のことがあって、彼の手が届かないところに、行った方がいいのではないか。両親が警察官になった方がいいのではないかと言ったために、わたしはここにやって来たんです」
「………そうでしたか」
「はい。ご存知の通りかと思いますが、叔父は政治家をやめました。つまり、わたしは晴れて自由の身になったんです。
両親に今からでも遅くはないから、警察官になりたくないならならなくてもいいぞって、言われてしまって」
「ほう」
「……わ、わたし、分からなくなったんです。自分が警察官になりたいのかどうか。自分の意志が一番大事だって分かってるんですけど、いざ選択肢を広げられると、どっちに進むべきなのか、まるで分からなくなってしまって」
わたしはじっと学長の瞳を見つめた。
「どうすればいいと思いますか……? わたし、こんな曖昧な気持ちで、本当に警察官になってもいいんでしょうか?」
学長はしばらくわたしを無言で見つめていたが、やがてすっと視線をそらして窓の方を眺めた。
「わたしは昔、日本文学の研修者になりたいと思っていました」
「………え?」
唐突にそんなことを打ち明けられて、目が点になる。
学長はポカンとしているわたしに構わず、話を続けた。
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ゆーーさく(プロフ) - やばい…天才だ! (9月28日 17時) (レス) @page31 id: f449807f37 (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 一気読みしてたらすごく時間がたってた! (2023年4月9日 0時) (レス) @page31 id: 1bd364c53c (このIDを非表示/違反報告)
白銀(プロフ) - 初めまして。今更ながら感想を伝えたくて…。ほんとに読んでいてとても幸せになりました!!このような作品を書いて下さりありがとうございました!!! (2022年6月14日 21時) (レス) id: 023af107f4 (このIDを非表示/違反報告)
はわわ - わはー泣いちゃいましたヨヨヨ (2022年5月17日 11時) (レス) @page31 id: 7f8b0d6085 (このIDを非表示/違反報告)
花奈(プロフ) - はじめまして!!とても素敵な作品で毎回ドキドキハラハラ、泣いたり笑ったりしながら読ませていただきました!!もし、可能なら松田くんと諸伏くんの付き合ったあとのafterstoryみたいなの見たいなって思います! (2022年4月18日 21時) (レス) id: 51c3fefc5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2020年5月29日 17時