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車は市街地を抜けて、高速道路を一時間ほど走った後、東京の中心へと向かっていった。
高層ビルが立ち並ぶ大通りを走り抜け、ようやく車がとまったのは、警察学校を出発してから二時間後のことだった。
どこだろう……ここ。
大きなお屋敷だった。
叔父さんの家ではない。もちろんわたしの家でもない。
巨大な長屋の日本家屋で、入口には黒い冠木門が構えてある。門をくぐると白い砂利が敷き詰められた、美しい庭園が広がっていた。
秘書に促されるまま、わたしはその屋敷の中に入った。
どくどく、と心臓が高鳴る。わたしはいったい、どこに連れて行かれるのだろう。誰に会わされるのだろう。
叔父さんが到着すると、屋敷の中から着物をきた年配の女性がやって来て、深々とお辞儀した。
「駒沢先生。お待ちしておりました。もうすでにお席の準備はできております」
「先生のご子息は、もうご到着か?」
「はい。数十分ほど前に」
「それはそれは。待たせて申し訳ない。先にこの子を着替えさせたいんだがね」
とんでもございません、と慇懃無礼に言う女性は、どうやらこの屋敷のお手使いさんらしい。こちらです、と先頭に立って歩きはじめる。
わたしは奥まった狭い部屋に通されて、その女性に言われるがままに白いレースのワンピースに着替えさせられた。式典用の、堅苦しいフォーマルなワンピースだ。
わたしが着替え終わったのを見て、叔父さんは満足げに微笑んだ。
そのまままた、お手使いさんに案内されて屋敷の中を進む。
しばらく歩くと、静まり返った長い廊下の先に、広い和室の部屋が見えてきた。
高級そうな漆塗りの座卓をはさんで、手前に二人の男性が腰かけている。
そのうちの一人の顔を見た瞬間、わたしは全ての物音が遠のいていくのを感じた。
「いやいや、遅くなって申し訳ありませんね、七条先生」
「めっそうもない。今日はめでたい日ですからな。堅苦しい挨拶は抜きに致しましょう」
手前の方に腰かけていた初老の男性が、唇だけを緩ませて、叔父さんに頭をさげる。
そのすぐ隣に腰かけているスーツ姿の人物と目が合って、わたしは目の前が真っ暗になった。
七条尊がわたしを見て、もう何度見たか分からない、背筋の凍り付くような下卑た笑いを口元に浮かべていた。
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ゆーーさく(プロフ) - やばい…天才だ! (9月28日 17時) (レス) @page31 id: f449807f37 (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 一気読みしてたらすごく時間がたってた! (2023年4月9日 0時) (レス) @page31 id: 1bd364c53c (このIDを非表示/違反報告)
白銀(プロフ) - 初めまして。今更ながら感想を伝えたくて…。ほんとに読んでいてとても幸せになりました!!このような作品を書いて下さりありがとうございました!!! (2022年6月14日 21時) (レス) id: 023af107f4 (このIDを非表示/違反報告)
はわわ - わはー泣いちゃいましたヨヨヨ (2022年5月17日 11時) (レス) @page31 id: 7f8b0d6085 (このIDを非表示/違反報告)
花奈(プロフ) - はじめまして!!とても素敵な作品で毎回ドキドキハラハラ、泣いたり笑ったりしながら読ませていただきました!!もし、可能なら松田くんと諸伏くんの付き合ったあとのafterstoryみたいなの見たいなって思います! (2022年4月18日 21時) (レス) id: 51c3fefc5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2020年5月29日 17時