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ぺたぺたと萩原くんに胸を触られるのは、ものすごく恥ずかしい。あんまり触らないで、と思いながらじっと羞恥に耐えていたら、ガラガラと保健室のドアが開いた。
「おーい、萩原?」
「遅ぇぞ。なにやってんだ?」
聞き覚えのある声が二つ、静かな医務室内に響いた。
「あーあ、うるさいやつらが来ちゃった」
ここだよ、と萩原くんが軽く入口の方向に手を振ると、ちょうど部屋に入って来た松田くんと諸伏くんと、ぱちりと目が合った。
とたんに諸伏くんが、あっ、と叫んで口をぱくぱくと動かしながら、わたしと萩原くんをかわるがわる眺め、松田くんはきりきりと眉を尖らせた。
「何やってんだ萩原、てめえ!」
「え、治療だけど」
「なにが治療だ! ただのセクハラだろうが! いい加減にしろよ」
「だって仕方ないじゃん。打ったのが胸だっていうからさ……位置的に自分で冷やしにくそうだったし」
「だから言っただろうが諸伏。こいつに任せたらロクなことにならねえって」
「……萩原。五秒以内にAちゃんから離れないとぶっ殺す」
「ええ……」
諸伏くんに睨まれても、全然動じない萩原くんは、わたしの横から動こうとしないどころか、わたしの肩に手をまわしてそっと引き寄せる。
「は、萩原くん!?」
「萩原っ!」
諸伏くんが怒鳴り、松田くんが肩をいからせてどしどしと歩いてくると、いきなりわたしの腕をつかんでベッドから立ち上がらせた。
しかしシャツはボタンが外れているせいで、松田くんが強く腕を引っ張った瞬間、ずるっと布が肌からずれる音がした。
「あ」
諸伏くんがまた呟き、首まで真っ赤になって口をぱくぱくする。
萩原くんが、「あちゃー」と肩をすくめ、松田くんが目をぱちぱちとしばたかせた。
わたしは黙って、自分の体を見る。
思いっきり引っ張られたシャツは完全にずれて、ブラの外れて裸になった胸がほとんど丸見えになっていた。
「………わりぃ」
気まずそうな表情を浮かべてさっと顔をそらし、松田くんがぼそっと謝った。
「…………」
わたしは静かにシャツのボタンを留めていき、最後の一つを止め終わると、松田くんにつかつかと歩み寄る。
いきなり近づいてきたわたしに、松田くんが珍しくぎょっとしたような顔をして、「ど、どうしたんだよ」と目線をさまよわせた。
「………歯、食いしばってね」
「あ?」
わたしは右手にすべての意識を集中させ、松田くんの頬を思いっきり平手打ちした。
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あやちゃん(プロフ) - 海星さん» 面白くて何回も読ませてもらっています!続きがくるのを楽しみにして待ってます! (2020年3月27日 20時) (レス) id: 60d90b2065 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - あの、ずっと更新停止されてますが大丈夫ですか? (2020年1月13日 7時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
桜 - そうだったのですか…。安心いたしました!テスト頑張ってください^^ (2019年11月27日 18時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 桜さん» 心配していただいて、ありがとうございます…今テスト中で。更新がゆっくりになってます。すみません! (2019年11月27日 16時) (レス) id: 4bcc115d21 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 最近、更新がありませんが体調など大丈夫でしょうか?とても心配です…… (2019年11月27日 0時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2019年11月9日 13時