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「そうそう。教官ももう、戻ってくる頃だし。ストレッチはもう終わりでいいんじゃないか？」
諸伏もそんなことを言う。
伊達くんが松田くんの肩をぽんぽんと叩き、諸伏くんがさりげなく、わたしを松田くんと萩原くんから遠ざけ、零くんが萩原くんの腕を引っ張った。
笑顔のまま、不気味に睨みあっていた二人だったが、ちょうどその時、教官が戻って来たので、その場は中断になった。
「おら、校庭行くぞ。さっさとしろ」
教官の一声で、わたしたちはぞろぞろと校庭へ向かって歩き出した。
●
「今から体力テストを実施する。まず五キロ持久走、そのあと反復横跳び百回、そのあと腕立てと腹筋、これは各自できるまでやってもらう。メニューは以上だ。それじゃあ、スタートラインに並べ」
今なんて言った？
五キロ走ったあとに、反復横跳び百回？ そのあと腕立てと腹筋？
わたしはすでに目の前が真っ暗になる。
一方、松田くんと零くんは妙な対抗意識を燃やしだして、絶対勝ってやると息巻いている。まるで小学生だ。
わたしはのろのろとスタートラインに並んだ。
わたしの顔色が良くないのを感じたのが、諸伏くんが心配そうな目を向ける。
「おい、大丈夫か？」
「う、うん……」
全然大丈夫ではないが、泣きごとを言ったところでメニューを変えてくれるわけではない。
わたしは引き攣った笑みを向けた。
「用意！」
教官が叫ぶ。
ピッ、と春の青空に高い笛の音が響き渡った。
だっと駆け出していく、五つの背中が見える。ぐんぐん遠くなって、早くも松田くんと零くんはコーナーに差し掛かっていた。
残る三人は、ペース配分を冷静に考えているのだろう、規則的な速さを維持しているようだが、わたしよりは格段に速い。
大して息もあがっていないみんなは、さっさとわたしを通し越して、二周目、三周目に突入していく。
みんなが最終レースを走っているとき、わたしはまだ二周目の真ん中あたりで、遅れているどころか完全に別次元の人間に成り下がっていた。
仕方ない……仕方ないわよ、A。
だってあんたは女の子だもの。成人男性とおんなじスピードで走れたら、むしろ奇跡、というか妖怪だよそれは。
心の中で自分に言い聞かせるが、いくら性別の違いがあるとはいえ、みんなが次々にゴールしていくなか、自分だけ広い校庭を走るのは形容しがたい虚しさと恥ずかしさだった。
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あやちゃん(プロフ) - 海星さん» 面白くて何回も読ませてもらっています！続きがくるのを楽しみにして待ってます！ (2020年3月27日 20時) (
レス) id: 60d90b2065 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - あの、ずっと更新停止されてますが大丈夫ですか？ (2020年1月13日 7時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
桜 - そうだったのですか…。安心いたしました！テスト頑張ってください^^ (2019年11月27日 18時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 桜さん» 心配していただいて、ありがとうございます…今テスト中で。更新がゆっくりになってます。すみません！ (2019年11月27日 16時) (レス) id: 4bcc115d21 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 最近、更新がありませんが体調など大丈夫でしょうか？とても心配です…… (2019年11月27日 0時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年11月9日 13時
