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「俺、赤井さんのこと、そんなに待たしてたんなら。やっぱ謝るしかないじゃないですか」
俺は赤井さんに縫いとめられていた手を、必死に動かした。赤井さんが何かを感じて腕を握る力をゆるめてくれた。
自由になった左手で、俺は赤井さんの手を掴みかえす。
「すみません……赤井さん。本当に……。
俺、赤井さんのこと忘れたくないんです。赤井さんのこと忘れた俺を赤井さんに見せたくないんです。だから……忘れる前に俺の方がいなくなっちゃえば、いいかって……そう思って……。
赤井さんのこと、信用してないわけじゃないんです。ほんとです。俺が一番、信用してないのは……俺自身なんです」
だって、俺は忘れちゃうんですよ。
赤井さんが俺をロサンゼルスまで探しにきてくれたことも。
二日間もつきっきりで、俺のそばにいてくれたことも。
顔色が変わるくらい、俺のこと心配してくれてたことも。
「全部……忘れちゃうんですよ。それでもいいんですか？ 赤井さんのこと、きっと傷つけますよ。赤井さんだけじゃない……みんなのことも。みんなが俺のためにしてくれたこと、俺は全部忘れちゃうんだから」
赤井さんが、俺の手を握り返す。
「そうだな」
「だから……」
「だが、俺はお前のことが好きだ」
迷いのない口調だった。
赤井さんは、少し笑ってすらいる。その優しい微笑みを見た瞬間、体がかっと熱くなって、もうどうしようもないほどに忘れたくないと思ってしまう。
「言ったはずだ。記憶がなくなっても、お前がお前であることに変わりはない。少なくとも、俺にとっては、な。AはAだ」
「そんなこと、わかってますよっ……！」
思わず俺は怒鳴り返した。
そんなこと。
ずっと前にもきいた。何度だって。
だけど……。だけど、俺にとっては………
「俺にとっては、たった一人の赤井さんなんですよ。俺の記憶の中にいる赤井さんが、俺の赤井さんなんですよ。新一だって、安室さんだって、父さんだって母さんだって。俺にとっては、唯一無二なんだよっ」
だから忘れたくないんです。
最後の言葉は、かすれてほとんど音になっていなかった。それなのに赤井さんには、ちゃんと聞こえたようだった。
赤井さんが、ほっとしような、心の底から嬉しそうな、そんな顔で微笑んだから。
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やっち(プロフ) - 凄くいいお話でした。ありがとうございます (2022年9月11日 12時) (
レス) @page50 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
アラバ - もう……なんかもう…………………やばかったですほんとに…………このお話思いついて、それを文章に現せるのが尊敬です………………もうなんか、やりきれない思いとか、最後までぐっっと涙をこらえていないと見れない作品でした……………小説、お疲れ様でした(泣)！！ (2021年5月16日 1時) (レス) id: bed3b6d329 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 凄く泣けました!赤井さんや降谷さんとの絡みもとても素晴らしく主人公の設定もちゃんとしていて、なんかこう!言葉に表せないぐらい感動しました！！！！！！ (2021年5月6日 12時) (レス) id: 8b38c910a7 (このIDを非表示/違反報告)
寝子(プロフ) - やはり神作品…何度読んでも泣いてしまうんです。責任とってください…！（謎） (2020年10月10日 7時) (レス) id: 7be43a5c44 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんでライム(プロフ) - めちゃくちゃに泣きました。二次創作ものでここまで感動したのは久しぶりです。一つの作品としてめちゃくちゃ楽しめました。作者様、ありがとうございました。 (2020年7月7日 23時) (レス) id: 01f6b2b9ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年11月4日 14時
