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「A、お前は、」
「すみません」
赤井さんが何か言うより早く、俺は自分でも驚くくらい淡々とした声でそんな謝罪の言葉を口にしていた。
赤井さんが少し驚いた顔をする。
そして、苦しそうに顔を歪ませた。
その瞬間、また胸が切り裂かれたように痛んだけれど、俺にはもうどうすることもできなかった。
「本当に……ご迷惑おかけしてすみません」
「お前は……どうして、そんな…」
「本当にすみません」
早口でそう言い切って、立ち上がろうとする。
けれども赤井さんの方が早かった。
俺の手首をソファに縫い付けて、赤井さんが俺にのしかかるように押し倒した。
「あかいさんっ……」
「俺は謝罪の言葉を聞くために、お前を追ってきたわけじゃない」
「離してっ……くださいっ」
「離したらどうする？ また逃げるのか？ さっきも黙ってこの部屋を出ていこうとしていたな。俺が気が付いていないとでも思ったのか？」
ぎゅっと奥歯をくいしばった。
赤井さんの顔を見ていられなくて、俺は顔をそむける。手首を握る赤井さんの力が強くなる。もう痛いくらいだ。
「それは……っ」
それ以上は何も言えなかった。
赤井さんの舌が、強引に俺の歯列をわって、口の中に入ってきた。手ひどくされると思って思わず目を瞑ったのに、赤井さんは俺の舌先にかるく触れただけで、そっと唇をはなした。
冷たい部屋の空気が、唇にふれる。
透明な唾液が糸をひいて、俺の首元に落ちてきた。
「お前は……俺のことが信用できないのか？」
「……あかい、さん」
「俺は……そんなにお前にとって、信用の足らない男なのか？」
息をのむ。
赤井さんのこんな顔を見たのは初めてだった。
歪められた顔。いつもは険しい目が今日はまるで覇気がない。かさついた唇と、ひどいクマ。間近で見ると赤井さんの顔は驚くほどげっそりしていた。
そういえば……俺が目覚めたときも、ずっと眠っていた。
いつから赤井さんは、俺の隣にいてくれたのだろう。どれだけ、俺のことを待っていてくれたのだろう。
俺はいつも、逃げ出しているのに。
「……俺、ずっと眠ってたんですか」
「……まる二日な」
「そう、ですか………」
ははっ、と嘲笑めいた笑い声が零れ落ちる。
赤井さんがぎょっとしたように俺を見た。
「おい、A」
「だったら、謝るしかないじゃないですか。やっぱり」
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やっち(プロフ) - 凄くいいお話でした。ありがとうございます (2022年9月11日 12時) (
レス) @page50 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
アラバ - もう……なんかもう…………………やばかったですほんとに…………このお話思いついて、それを文章に現せるのが尊敬です………………もうなんか、やりきれない思いとか、最後までぐっっと涙をこらえていないと見れない作品でした……………小説、お疲れ様でした(泣)！！ (2021年5月16日 1時) (レス) id: bed3b6d329 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 凄く泣けました!赤井さんや降谷さんとの絡みもとても素晴らしく主人公の設定もちゃんとしていて、なんかこう!言葉に表せないぐらい感動しました！！！！！！ (2021年5月6日 12時) (レス) id: 8b38c910a7 (このIDを非表示/違反報告)
寝子(プロフ) - やはり神作品…何度読んでも泣いてしまうんです。責任とってください…！（謎） (2020年10月10日 7時) (レス) id: 7be43a5c44 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんでライム(プロフ) - めちゃくちゃに泣きました。二次創作ものでここまで感動したのは久しぶりです。一つの作品としてめちゃくちゃ楽しめました。作者様、ありがとうございました。 (2020年7月7日 23時) (レス) id: 01f6b2b9ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年11月4日 14時
