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突然に体を包み込んだ、暖かさと重みに頭が真っ白になる。
俺が暴れるのを制するために抱き込んでいる、というよりは、恋人にする優しい抱擁のようだった。
赤井さんは太い腕をそっと俺の背中に回して、優しくあやすようにとんとん、と軽くたたく。
赤井さんの見知ったタバコのにおいが強くなり、耳元をくすぐる吐息に、心の中に渦巻いていた憎悪が急速に萎んでいくのを感じた。
「A……聞いてくれ……君を追い詰めたいわけじゃないんだ」
赤井さんが優しい声で、そっと囁く。
「だが、君の二重人格を知っていながら放置しておくことは俺にはできなかったんだ……傷つけてすまない……ほんとうに」
許してくれ、と絞り出すような声を出す赤井さんの顔は、悲痛に歪んでいる。
そんな泣きそうな顔して。
泣きたいのは、俺の方だ。
許しを乞うなら、どうしてこんなこと………。
初めからしなければ、よかったじゃないか。
「あんた……おかしいよ…矛盾してる」
「そうだな……」
俺の言葉に赤井さんは泣き笑いの顔でうなずいた。
「おかしい……こんなの…おかしいのに……」
くぐもった嗚咽が、また漏れ始める。
喉が悲鳴をあげるように鳴った。
「……いや、おかしいのは…俺だよな…俺は……だって……でも、」
訳の分からない、言葉にならない言葉がとめどなく溢れてとまらない。
だって嬉しかったのだ。
幸せだったのだ。
前世の俺が、あれほど願ったものを、自分の命を捧げてまで欲しいと願った全てのものを、あの人たちは与えてくれた。
父さん、母さん、新一。
俺の、家族。
だったはずの人たち………。
「お前はおかしくない。自分を否定するな」
赤井さんの言葉に、ふるふると首を振った。
今更何を。
そんな慰めなんて、余計に心を抉られるだけだ。
「おかしいんだよっ……赤井さんだってそう言っただろ」
「おかしいとは一言も言ってない。その自己否定が一番の問題なんだよ、A」
赤井さんはそう言うと、俺の頬を伝う涙をそっとぬぐった。
「君はずっと家族の愛を知らずに育った。その君が、生まれ変わって優しい父母に愛を抱くことの何がおかしい？ 当然のことだ……人間ならな。
自分を責めるな。君は悪くない」
誰も、悪くないんだよ。
赤井さんが言い聞かせるように、ゆっくりと耳元で囁く。
ぎゅっと抱きしめる腕が強くなった。
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やっち(プロフ) - 凄くいいお話でした。ありがとうございます (2022年9月11日 12時) (
レス) @page50 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
アラバ - もう……なんかもう…………………やばかったですほんとに…………このお話思いついて、それを文章に現せるのが尊敬です………………もうなんか、やりきれない思いとか、最後までぐっっと涙をこらえていないと見れない作品でした……………小説、お疲れ様でした(泣)！！ (2021年5月16日 1時) (レス) id: bed3b6d329 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 凄く泣けました!赤井さんや降谷さんとの絡みもとても素晴らしく主人公の設定もちゃんとしていて、なんかこう!言葉に表せないぐらい感動しました！！！！！！ (2021年5月6日 12時) (レス) id: 8b38c910a7 (このIDを非表示/違反報告)
寝子(プロフ) - やはり神作品…何度読んでも泣いてしまうんです。責任とってください…！（謎） (2020年10月10日 7時) (レス) id: 7be43a5c44 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんでライム(プロフ) - めちゃくちゃに泣きました。二次創作ものでここまで感動したのは久しぶりです。一つの作品としてめちゃくちゃ楽しめました。作者様、ありがとうございました。 (2020年7月7日 23時) (レス) id: 01f6b2b9ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年11月4日 14時
