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声にならない嗚咽と、醜い叫び声のようなものが、噛みしめた歯と歯の間から零れ落ちる。
ちがう。ちがう。
俺は………俺は工藤Aだ。
真嶋ヒカルは死んだ。死んで工藤Aになったのだ。
俺が、俺の方が、「もう一人の自分」だなんて、そんなこと嘘だ。
「これは君が書いたものだな？」
赤井さんが俺に数枚の紙が束になったものを差し出す。それは確かに俺が以前、書き記したものだ。
自分の過去を、本来の正体を。
けれどもそれは、自分が「本当のA」であることを疑わなかった頃に書いたものだ。
俺はずっと前から、自分が二重人格であることには気が付いていた。
俺の中に、もう一人、得体の知れない人間がいることにも。
それに耐えられていたのは、自分が本物だと信じていたからだ……。だから俺は被害者ぶって、いつか俺が俺じゃなくなっても、仕方ないないんて、きれいごとを言えたのだ。
自分が本物だと思い込んでいたから。
いや、じゃあ、いったいどうやって疑えばよかったんだ？
だって生まれたときから、俺はずっと工藤Aだったんだから。
本来のAを俺が無意識に抑圧していたなんて、そんなこと、俺には知ったことじゃない。
「しらない、おれの、せいじゃない………」
ようやく絞り出した声は、自分でもぞっとするほど醜かった。
「おれが、Aの幸せを、横取りした……？
おれは、工藤Aだ。父さんと母さんの子供だ………愛されて当然だ。俺が享受すべき幸せだ」
そうだ。
あんなにも愛してると言ってくれたのだ。
「この体も、記憶も、何もかも俺のものだ。
父さんも、母さんも。新一も。
俺の、俺のっ、ものなんだよっ！！！！！」
ぼろぼろと涙があふれてくる。とめどなく流れてとまらない。
いつだってそうだ。
いつだって、俺の幸せを、こうやって誰かが壊してしまう。
ずっと昔だってそうだった。
俺と母さんの……二人の幸せをあの男は奪った。
そして今度は、目の前のこいつだ。
「また俺の人生をめちゃくちゃにするつもりなんだろっ！！ 次はお前だ。
お前もあの男とおんなじだ」
「違う、俺は」
「黙れ……！！！」
自由のきかない手のかわりに、赤井さんの腹を思いっきり蹴り飛ばした。しかし赤井さんはかすかに顔を歪めただけで微動だにしなかった。
そればかりか、俺をぎゅっと抱きしめたのだ。
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やっち(プロフ) - 凄くいいお話でした。ありがとうございます (2022年9月11日 12時) (
レス) @page50 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
アラバ - もう……なんかもう…………………やばかったですほんとに…………このお話思いついて、それを文章に現せるのが尊敬です………………もうなんか、やりきれない思いとか、最後までぐっっと涙をこらえていないと見れない作品でした……………小説、お疲れ様でした(泣)！！ (2021年5月16日 1時) (レス) id: bed3b6d329 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 凄く泣けました!赤井さんや降谷さんとの絡みもとても素晴らしく主人公の設定もちゃんとしていて、なんかこう!言葉に表せないぐらい感動しました！！！！！！ (2021年5月6日 12時) (レス) id: 8b38c910a7 (このIDを非表示/違反報告)
寝子(プロフ) - やはり神作品…何度読んでも泣いてしまうんです。責任とってください…！（謎） (2020年10月10日 7時) (レス) id: 7be43a5c44 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんでライム(プロフ) - めちゃくちゃに泣きました。二次創作ものでここまで感動したのは久しぶりです。一つの作品としてめちゃくちゃ楽しめました。作者様、ありがとうございました。 (2020年7月7日 23時) (レス) id: 01f6b2b9ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年11月4日 14時
