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赤井さんが顔を歪める。
緑の瞳には、俺が映っている。今にも泣きそうな顔をした俺の顔が。
「………君は前世、養父から虐待を受けており、その男に殺された」
「知らない。そんな話、知らない」
「そしてなぜか前世の記憶をもって生まれた君は、真嶋光ではなく今度は工藤Aとして第二の人生を歩み始めた」
「違う。違う」
「君は忘れようとした。おぞましい前世の記憶を。真嶋光を封印し、工藤Aとして生きてきた。それは、おおむね成功していた」
そうだろう？
奇妙な現象が起きるまでは。
「何かの拍子につけて、君はよく失神した。その直後に目覚める君は、君ではなかった……自分でも覚えのないことを周りの人間がまるで君自身の言動のように言うことに、君は疑問を覚え始めた。
もしや、自分が眠っている間、誰か全く違う自分が目覚めているのではないか？ とな」
「…………やめろ、やめてくれ」
唸り声のような、言葉にならない声が口の端から漏れる。
赤井さんは一瞬、何かと葛藤するように口を閉ざすが、また喋り始める。
「そして、それは全くその通りだった。君の中には、もう一人の人間がいた」
「……どうして。やめてって言ってるのに」
「もう気が付いているんだろう？ もう一人の自分の正体に。……いや、君は初めから直感的に気が付いていたのかもしれない」
あああ、と悲鳴が漏れる。
耳をふさごうとしたが、両手は赤井さんに絡めとられていた。
なんの涙かもわからない、透明な雫が俺の目尻から頬へと流れていく。
赤井さんの腕が震えている。
涙でぼやけた視界の先で、赤井さんのひどく整った顔だけがぼんやりと浮かんでいた。
「もう一人の君の正体は、工藤A。
前世の記憶持たない、本当の工藤Aだ」
● ● ●
「そう＿＿＿＿＿＿＿＿“もう一人の君”という言い方は正しくない。
A……いや、ヒカル、君こそがもう一人のAだ。本当の工藤Aは、前世の記憶など持たない、工藤夫妻の息子そのものとして生まれてくるはずの人間の人格だったんだ」
俺は今度こそ、はっきりと今まで築き上げてきたものが、大きな音を立てて崩れ落ちるのを感じた。
俺は、俺の理性が、ゆっくりと崩壊していくのを感じていた。
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やっち(プロフ) - 凄くいいお話でした。ありがとうございます (2022年9月11日 12時) (
レス) @page50 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
アラバ - もう……なんかもう…………………やばかったですほんとに…………このお話思いついて、それを文章に現せるのが尊敬です………………もうなんか、やりきれない思いとか、最後までぐっっと涙をこらえていないと見れない作品でした……………小説、お疲れ様でした(泣)！！ (2021年5月16日 1時) (レス) id: bed3b6d329 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 凄く泣けました!赤井さんや降谷さんとの絡みもとても素晴らしく主人公の設定もちゃんとしていて、なんかこう!言葉に表せないぐらい感動しました！！！！！！ (2021年5月6日 12時) (レス) id: 8b38c910a7 (このIDを非表示/違反報告)
寝子(プロフ) - やはり神作品…何度読んでも泣いてしまうんです。責任とってください…！（謎） (2020年10月10日 7時) (レス) id: 7be43a5c44 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんでライム(プロフ) - めちゃくちゃに泣きました。二次創作ものでここまで感動したのは久しぶりです。一つの作品としてめちゃくちゃ楽しめました。作者様、ありがとうございました。 (2020年7月7日 23時) (レス) id: 01f6b2b9ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年11月4日 14時
