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「とにかく、思い出せる限りでいいから、もう一人の君についての情報を俺に教えてくれ」
俺が言うと、Aはんー、と顎に手を当てて考え込む。
「……ふとした拍子に気を失うことがあって。
そして次気がついたときに、自分が以前いた場所と違うところにいたりとか…こんなことしてたっけ？ みたいなことしてたとか…そういうことはあります」
「具体的には？」
「江戸川乱歩の大金塊、知ってます？」
唐突なAの質問に、俺はえっ、と声を上げる。
「知ってるけど……江戸川乱歩は好きだし。なんで？」
「あの本、俺の母親が好きだったんですよね。あ、前世の母親って意味ですけど……。出てくるやり手の女盗賊に憧れてたみたいで。よく俺にもその本を読んでくれて。
その本が、工藤邸にもあるんですけど、以前その本を見つけて読もうとしたら、中に手紙みたいなのがはいってて…」
「手紙？」
「はい……その手紙、みたいなのが、実は日記のようなもので。
読んでいったら、書かれてあることが、身に覚えのあることばかりだったんです。
それで、気を失ったあとに、全然別の俺が現れてくるんじゃないかって」
「気がついたわけか」
ええ、と神妙にうなずくA。
「その日記の内容って、もしかして……」
俺は立ち上がり、ソファのわきにある棚から、一冊のメモ帳を取り出した。
「これと同じようなもの？」
それは、気を失って部屋に運んで来た時、目覚めたAが一心不乱に書き殴っていた、あの奇妙なメモである。
『………そこは、ずいぶんまえに、ぼくがねむっていたへやと、おなじへやでした。』
『めのまえには、みしらぬせのたかいおとこの人がいて、しらない名まえをよんでいます。』
『それはこのまえ、大きなおやしきのようなへやのリビングでめざめたとき、めつきのするどいあのおとこの人が、ぼくをよんだ名とおなじ名でした。』
「……これは」
「君が、数時間前に書いていたものだよ。覚えがないのか？」
Aの顔が、少し青ざめる。黙って首を横に振った。
「ない……ないです」
「じゃあ、これを書いていたのは、もう一人の君ってことだな」
「この " ずいぶんまえにねむっていたへやと、おなじへや " って……」
「君が以前、買い物の帰りに倒れた時、この部屋と同じ部屋に泊まっていた。みしらぬせのたかいひと、は俺のこと。
最後の文はちょっとよく分からないけど……」
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やっち(プロフ) - 凄くいいお話でした。ありがとうございます (2022年9月11日 12時) (
レス) @page50 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
アラバ - もう……なんかもう…………………やばかったですほんとに…………このお話思いついて、それを文章に現せるのが尊敬です………………もうなんか、やりきれない思いとか、最後までぐっっと涙をこらえていないと見れない作品でした……………小説、お疲れ様でした(泣)！！ (2021年5月16日 1時) (レス) id: bed3b6d329 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 凄く泣けました!赤井さんや降谷さんとの絡みもとても素晴らしく主人公の設定もちゃんとしていて、なんかこう!言葉に表せないぐらい感動しました！！！！！！ (2021年5月6日 12時) (レス) id: 8b38c910a7 (このIDを非表示/違反報告)
寝子(プロフ) - やはり神作品…何度読んでも泣いてしまうんです。責任とってください…！（謎） (2020年10月10日 7時) (レス) id: 7be43a5c44 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんでライム(プロフ) - めちゃくちゃに泣きました。二次創作ものでここまで感動したのは久しぶりです。一つの作品としてめちゃくちゃ楽しめました。作者様、ありがとうございました。 (2020年7月7日 23時) (レス) id: 01f6b2b9ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年11月4日 14時
