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「……どうしたんだよ」
具合でも悪いのか？ そんなことを言いながらぐいっと俺の肩を引き寄せる降谷さんは、少しも俺が具合が悪いと思っている様子はない。
わずかに期待しているようなその眼差しに、羞恥と自分への苛立ちが募る。
馬鹿な。
こいつは男だぞ。
絶対ない、ありえない。
「なんでもない」
手を払い除けようとしたが、逆に絡めとられて、キッチンの作業台に押し付けられる。
俺より少しだけ高い目線が、俺のことを見下ろして、どうしたものかと思案しているようだ。
戸惑ったような、それでいて逃してなるものか、というような爛々とした雄の目が、青い瞳の奥でチラリとよぎる。
その瞬間、ぶわっとまた、体が熱くなった。
顔をそらしたら負けだと思ったが、どうすることもできなかった。
無言でキッチンの磨かれた床を睨んでいると、握られた手が強くなる。
「離せよ……っ、離してください」
「……ちょっと話し合いたいんだけど」
「……さっきさんざん、話しただろ」
そうだけど、と口籠る。
無理強いはしない。けれど主導権も渡さない。
降谷さんが、俺の耳元に唇を寄せる。熱の孕んだ吐息に、びくりと体が震えた。
「俺のこと好き？」
こいつ……。
思わず顔面を殴りそうになった。
こんな少女漫画みたいなやり取り、アラサーの男同士がやりあってどうすんだよ。
救いようがないだろ……。
なぁ、と返事を促すような降谷さんの口調は、ほとんど一方的だ。肩に回された手が下に降りて、腰を抱かれた。
さすがにそれは、と強く押し返したが、降谷さんはそれ以上の力で俺を抱き寄せてくる。
「言えよ、はやく」
「………脅迫、っしてんじゃねえよ」
「恥ずかしくて言えないみたいだから、促してやってるんだろ」
「うるさい……お前、ほんとっ…いい加減にしろよ」
言葉が強気でないと、どうにかなってしまいそうだ。
沸騰寸前のように茹だった自分の体を、この爆発するほどの鼓動を、目の前の男が感じていないわけがない。
頭を抱えたくなる。
最悪だ。
「言って、A」
言うまでこのままだからな、と今度こそ脅迫極まりない言葉を投げかけてくる降谷さんに、くっと唇をかみしめる。
こんな口説き文句あるかよ、馬鹿野郎。
震える唇を開いた。
冷たい空気が、歯列をかすめる。
息を吸い込んだとき、熱い空気を切り裂くように、携帯電話が着信を告げた。
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やっち(プロフ) - 凄くいいお話でした。ありがとうございます (2022年9月11日 12時) (
レス) @page50 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
アラバ - もう……なんかもう…………………やばかったですほんとに…………このお話思いついて、それを文章に現せるのが尊敬です………………もうなんか、やりきれない思いとか、最後までぐっっと涙をこらえていないと見れない作品でした……………小説、お疲れ様でした(泣)！！ (2021年5月16日 1時) (レス) id: bed3b6d329 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 凄く泣けました!赤井さんや降谷さんとの絡みもとても素晴らしく主人公の設定もちゃんとしていて、なんかこう!言葉に表せないぐらい感動しました！！！！！！ (2021年5月6日 12時) (レス) id: 8b38c910a7 (このIDを非表示/違反報告)
寝子(プロフ) - やはり神作品…何度読んでも泣いてしまうんです。責任とってください…！（謎） (2020年10月10日 7時) (レス) id: 7be43a5c44 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんでライム(プロフ) - めちゃくちゃに泣きました。二次創作ものでここまで感動したのは久しぶりです。一つの作品としてめちゃくちゃ楽しめました。作者様、ありがとうございました。 (2020年7月7日 23時) (レス) id: 01f6b2b9ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年11月4日 14時
