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「だから……無理だって言ってるでしょ」
「やってみなくちゃ分からないだろ」
「……そういう問題じゃないんだよ。もう手遅れなんだよ」
Aの自嘲的な声に息を飲む。
もう、手遅れ……？
「どういうこと？」
「……本気で聞く気、あるんすか？」
Aの瞳は、俺をどこか嘲笑っているようだ。
俺をぐっと唇を噛みしめる。
「当たり前だ。さっきからそう言ってるだろ」
「……なんでそんなに偉そうになってんだよ。わけわかんねえ」
俺はすっと息を吸い込む。
彼の心を開くには、俺も彼に心を開く必要があるだろう。俺と彼が同じタイプの人間なら、隠し事のある人間に、自分の最も弱い部分を晒そうとは思わない。
「……これが、本当の俺だからさ」
Aが驚いたように目を見開いて、俺を見つめる。
「本当の、安室さん？」
「安室じゃない……俺の本当の名前は、零……降谷零だ」
よろしく、とかすかに微笑むと、戸惑ったような顔をする。
俺はAの揺れる瞳を、じっと見つめた。
「俺は手札を晒したぞ。君は＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿本当の君は？」
何者、なんだ？
Aの瞳がぐらぐらと揺れている。
涙で濡れた睫毛も、寒さでこごったように震えていた。
言おうか、言うまいか。
目の前の男の信用するのか、しないのか。
激しい葛藤に苛まれているような顔を、俺は目をそらさず見つめ続けた。
何があっても、たとえ彼がどんな秘密を隠していたとしても、俺は受け止めよう。必ず助けてみせる。
迷いはなかった。
Aがゆっくりと息を吸い込み、ふっと笑った。
今にも消えそうな、儚い笑みだった。
「俺の中には、もう一人の俺がいる」
Aの声が、魂の抜けた空洞から響くように、ぽつりと吐き出されて消えた。
● ● ●
「………もう一人の俺は、俺の意識がないときに現れる」
「二重人格ってことか？」
「どうだろう。ただ、恐ろしい感じはしない。むしろ、それに安心するんだ」
「安心する？」
俺は驚いて聞き返す。
「ずっと昔から、そうだった。ひどく安心して、懐かしい……俺はいつかは、もう一人の俺に、きっとこの体を乗っ取られる……いや、乗っ取ってほしいんだ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「狂ってるだろ？ 自分でもそう思う。でも止められないんだ。もう一人の俺が現れる回数が、増えている。もうすぐ俺は、俺じゃなくなる」
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海星(プロフ) - カラ松ガールさん» ありがとうございますっ…！ めちゃくちゃ嬉しいです！！ 頑張ります！ (2019年10月31日 7時) (
レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
カラ松ガール(プロフ) - 前回からここまで一気読みしました！神ってました！大好きです！ (2019年10月30日 23時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 74話に誤字がありました。「有紀子」ではなく、「有希子」です。 (2019年10月28日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 架印�靴気�» わわわ！ ほんとですね！ お恥ずかしい…ご指摘ありがとうございますっ！ (2019年10月26日 10時) (レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
架印��(プロフ) - 66話：「このタケシード姿、なかなかいいな」の所…。“タキシード”が“タケシード”になってますよ。 (2019年10月26日 0時) (レス) id: cb6e7377c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年10月18日 9時
