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腕の中の温もりが消えたな、とぼんやりと思いながら目を覚ました。
抱きしめていたらいつのまにか眠ってしまったAにつられ、俺も眠り落ちて、1時間と少し。Aの姿が見えない。
いいようのない不安と焦燥感が胸を焼く。
俺の体には、Aにかけてやったはずの毛布がかけられていた。
「Aさん……？」
起き上がりながら名前を呼ぶと、キッチンから「あれー、安室さん起きたんすか？」と能天気な声がした。ほっと胸を撫で下ろす。なんでかは分からなかったけど。
「……人の家で勝手に何やってるんです？」
俺が顔をしかめてキッチンを覗き込むと、エプロンをつけて俺の服を着たAが、黙々と料理を作っていた。
「みて分かりません？ 夕飯っすよ。だいぶ遅くなっちゃったけど」
壁のデジタル時計は、午後八時過ぎを指していた。俺は痛む頭を抱える。
「それ、僕の服ですよね？」
「すみません、貸してもらいました。全裸で料理はさすがにまずいでしょ」
「勝手にいなくならないでくださいよ。起きたらどこにもいないから、びっくりするでしょう」
「はは、そうでした？」
俺の文句に苦笑いを浮かべる目の前の青年は、相変わらず朗らかで優しそうで、なんの変哲もないただの一般人のはずなのに、どうしてか掴みどころがない。
俺はAに近寄って、手元を覗き込む。
人参、玉ねぎ、ジャガイモ………
「………カレーですか？」
「メニュー考えるのダルくて……あと近いです安室さん」
「いろいろ聞きたいことがあります」
俺はAを無視して、白いまな板を凝視しながら言った。均等に切られた人参と、Aの白い手も見える。
「聞きたいこと？」
「ベルモットと一緒にいましたね」
「………」
Aが無言で包丁を動かす。小気味いい、トントンという音だけが響く。
変化は特にない。動揺もしていない。ただ、淡々と野菜を切っている。
「なぜ彼女と一緒にいたんです？」
「…………」
「黙ってないで何とか言ってくださいよ」
Aは何も答えない。
黒い髪の毛が、彼の横顔にかかって、表情が読めなかった。俺はそっと手を伸ばして、その細くて柔らかな髪をそっと払いのける。
そして、はっと息を飲んだ。
日本人らしい、起伏の少ない端正な顔をわずかに歪ませて、Aは静かに泣いていた。
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海星(プロフ) - カラ松ガールさん» ありがとうございますっ…！ めちゃくちゃ嬉しいです！！ 頑張ります！ (2019年10月31日 7時) (
レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
カラ松ガール(プロフ) - 前回からここまで一気読みしました！神ってました！大好きです！ (2019年10月30日 23時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 74話に誤字がありました。「有紀子」ではなく、「有希子」です。 (2019年10月28日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 架印�靴気�» わわわ！ ほんとですね！ お恥ずかしい…ご指摘ありがとうございますっ！ (2019年10月26日 10時) (レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
架印��(プロフ) - 66話：「このタケシード姿、なかなかいいな」の所…。“タキシード”が“タケシード”になってますよ。 (2019年10月26日 0時) (レス) id: cb6e7377c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年10月18日 9時
