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「寒くないですか？ 熱はないようですが、念のため風邪薬を飲んでおきましょう。今準備しますね」
俺はAの頭を静かに撫でると、立ち上がる。Aは俺をぼうっと見つめたまま返事をしない。その様子を少し奇妙に感じながらも、まだ意識が混濁しているのだろうか、と考えた。
風邪薬と水の入れたコップを持って帰ってくると、Aが何やら俺に背を向けるようにして、右手を動かしている。
俺は数秒立ち止まってから、そっと背後から覗き込んだ。
小さなノートのようなものに、必死に何かを書き込んでいるようだ。
文字が蛇のように波打って、ひどく読みにくい。
俺は目を凝らす。
『………そこは、ずいぶんまえに、ぼくがねむっていたへやと、おなじへやでした。』
『めのまえには、みしらぬせのたかいおとこの人がいて、しらない名まえをよんでいます。』
『それはこのまえ、大きなおやしきのようなへやのリビングでめざめたとき、めつきのするどいあのおとこの人が、ぼくをよんだ名とおなじ名でした。』
「………Aさん？」
びくりとAの肩が震えた。おそるおそるというように振り向いたAの瞳には、はっきりと恐怖が浮かんでいる。Aがノートを握りしめて、ずるずると後ずさった。
被せてやった毛布が垂れて、肩が剥き出しになっている。
「……それ、なにかの小説ですか？」
Aはさっとめをそらした。
ひどく震えている。顔が青白い。俺はゆっくりとAに近づくと、毛布をかけ直してやる。
直感的に、これ以上問い詰めてはいけないと思った。これ以上問い詰めたら、きっと目の前の青年は壊れてしまう。
「心配しなくても、君が探って欲しくないと思うなら、詮索しないよ」
君も俺にそうしてくれたから、そう呟けば、はっとしたように俺を見る。
その瞳が今にも壊れそうなほど繊細で、俺の胸がまたざわざわと騒がしくなる。
「俺は、君の味方だ」
胸騒ぎを押し隠して、俺はそっとAを抱きしめた。
● ● ●
「ふぅ……あいたか？」
箱の中から、長方形の封筒を取り出して、一息つく。なかなか手強い仕掛けだった。さすが優作が考えただけはある。
あの日、Aが食い入るように見ていたあの手紙に違いない。
そっと手紙を開け、俺はそれを読み始めた。
『いまからここにかくことは、すべて……………
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海星(プロフ) - カラ松ガールさん» ありがとうございますっ…！ めちゃくちゃ嬉しいです！！ 頑張ります！ (2019年10月31日 7時) (
レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
カラ松ガール(プロフ) - 前回からここまで一気読みしました！神ってました！大好きです！ (2019年10月30日 23時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 74話に誤字がありました。「有紀子」ではなく、「有希子」です。 (2019年10月28日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 架印�靴気�» わわわ！ ほんとですね！ お恥ずかしい…ご指摘ありがとうございますっ！ (2019年10月26日 10時) (レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
架印��(プロフ) - 66話：「このタケシード姿、なかなかいいな」の所…。“タキシード”が“タケシード”になってますよ。 (2019年10月26日 0時) (レス) id: cb6e7377c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年10月18日 9時
