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安室は屋敷の大きな皮張りのソファに腰掛ける。
沖矢は大きなトレイにティーカップをのせて、キッチンから現れると、それを安室の前に丁寧に並べた。
「クッキーはお好きですか？ 紅茶にはやはりクッキーですよね……あ、でもイギリスではビスケットって言うらしいですけど」
沈黙をうめるように喋る沖矢を、面白そうに眺める安室。
「いいんですよ、そんなに気を使っていただかなくても……僕とあなたの関係なんですから」
「……はぁ」
沖矢の気の抜けたような返事に、安室ははじめて苛立ちのこもった目を向けた。
しかしすぐ笑顔に戻り、用意された紅茶に手はつけず、ある「奇妙な物語」を語るべく、口を開いた。
● ● ●
「ある男が頭を拳銃で撃たれ車ごと焼かれるという凄惨な事件がありました。それが全ての始まりです」
シャンデリアが照らす大き屋敷のリビングに、安室の声が静かに響く。
「けれども幸運なことに、辛うじて焼け起こったその男の右手から採取された指紋が、生前その男が手に取ったというある少年の携帯電話に付着していた指紋と一致し、遺体が特定されたのです」
「…………」
「しかし一つ、奇妙なことが……。
撃たれた男は左利きなのに、携帯には右手の指紋がついていたのです…。変だとは思いませんか？」
「どうでしょう……たまたま利き手と逆の手で携帯を触ったのかも」
沖矢は少し考え込んだあと、そう返答する。
安室はその答えは予想通りというように、そうですねとうなずいた。
「もちろん、その推測は妥当だと思いますよ。しかし僕も探偵のはしくれ……些細な矛盾を見つけたなら、それを追求せずにはいられない性でして」
そこで僕は、こんな風に推理してみたんですよ。
安室がにっこりと微笑む。
「利き手と逆の指紋がついていたのは、右手で取らなければならない理由があったから……それは別の男の右手の指紋がついていたため、です。
別の男の指紋と混同しないように指先にあらかじめコーティングしていたとしたら、携帯には右手の指紋しか残らない…」
「……はぁ。コーティング……？ なぜそんなことを…」
「なぜ？ はははは…面白いことをおっしゃる。
そう、携帯に残っていた指紋は赤井秀一ではなく、その前に手に取った楠田陸道の指紋。
つまり、来葉峠で頭を撃たれて焼かれたあの遺体は、赤井秀一ではなく、楠田陸道だった、というわけですよ」
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海星(プロフ) - カラ松ガールさん» ありがとうございますっ…！ めちゃくちゃ嬉しいです！！ 頑張ります！ (2019年10月31日 7時) (
レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
カラ松ガール(プロフ) - 前回からここまで一気読みしました！神ってました！大好きです！ (2019年10月30日 23時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 74話に誤字がありました。「有紀子」ではなく、「有希子」です。 (2019年10月28日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 架印�靴気�» わわわ！ ほんとですね！ お恥ずかしい…ご指摘ありがとうございますっ！ (2019年10月26日 10時) (レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
架印��(プロフ) - 66話：「このタケシード姿、なかなかいいな」の所…。“タキシード”が“タケシード”になってますよ。 (2019年10月26日 0時) (レス) id: cb6e7377c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年10月18日 9時
