episode109 ページ19
ふうん、となぜか面白くなさそうな顔で相槌を打つ快斗は、「これに決定な」と黒のスリットドレスを差し出してきた。
「いやいやいや、おかしいよね〜。どう考えても私に似合ってないよね〜」
「まあ任せろ。こういうのはな、髪型とか化粧とかで似合うように変わるんだよ。俺がちゃーんと教えてやるから、その通りにして着るんだぜ?」
「えー、っていうか、これいつ着るの? そもそもなんでドレス?」
「んー、そのうち多分入用になるからな。二週間以内に」
「何でわかるのよ」
「とにかく!! その日が来たら、ちゃーんとこのドレス着て、俺が教えたようにメイクしてこい。いいな?」
「理由は?」
目を細め、じろじろ快斗を見るわたしに、なぜか快斗はにこりと微笑んだ。わけもなく嫌な予感がする。
快斗はつかつかと歩み寄ってきて、頭一つ低いわたしの肩に、そっと手を置いた。
顎を持ち上げられ、強制的に上を向かせられる。
「か、快斗……?」
「綺麗なAを見てみたいって理由じゃ、だめ?」
優しい微笑を浮かべ、そっと首をかしげる。心臓が早鐘のようになりだした。
顔が赤い、たぶん。
「なななななな、なに言ってんの」
「なんだろうな」
「いやいやおかしいでしょ。頭でも打ったのか貴様」
「打ってねえよ、失礼なやつだな」
パチン、とおでこを指で弾かれる。いてっと額を押させて、涙目になりながら上目遣いに快斗を睨む。
「なにその顔。誘ってんの?」
「……っ!!!??」
とりあえず快斗の足を蹴る。
いってえな、と大して痛そうでもない風にドレスをキャッシュカウンターに持っていく快斗。
本当に買うつもりらしい。
「あ、靴もいるよなぁ。ハイヒールがいいかな」
思い出したように呟くと、ドレスにあう黒のハイヒールも追加される。最悪だ。
そんな高いピンヒールのやつ履けないって……。
結局新品のドレスと靴を持たされ、メイクの仕方を教えてから、快斗は颯爽と立ち去っていった。
ほんと、なんなんだあいつ………。
●
しかし、快斗の言った通り、すぐにドレスが必要になる日がやって来た。
鈴木財閥で次郎吉さんの誕生日会が開かれることになり、そこで鈴木家に伝わる名宝がお披露目されるという。
園子ちゃんからは、私と蘭ちゃんと世良ちゃんに豪華な金字の招待状が届けられた。
そして、招かれざる客も________。
「◯月×日、当家の財宝 “ 紫の火石 ” 頂戴しに参ります」
怪盗キッドより、と。
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やっち(プロフ) - 更新お待ちしてます (2022年4月22日 11時) (レス) @page23 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
みー - 主人公ちゃんも赤井さんも魅力的で何度も読み返しちゃいます、、いつかまた戻って更新されてるの楽しみにしてますね! (2021年8月31日 20時) (レス) id: fa7939d4a9 (このIDを非表示/違反報告)
S(プロフ) - 面白かったです。更新楽しみにしています!!! (2021年6月2日 2時) (レス) id: 3c947ce476 (このIDを非表示/違反報告)
ふわ - めっちゃくちゃおもしろかったです! (2021年4月23日 17時) (レス) id: 1d6a9bd8f3 (このIDを非表示/違反報告)
キサキ(プロフ) - 面白くて何度も戻ってきて読んじゃいます、更新お待ちしております頑張ってください!!! (2020年10月20日 10時) (レス) id: a8bb3b0a09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2019年9月30日 12時