検索窓
今日:1 hit、昨日:6 hit、合計:84,071 hit

episode103 ページ13

「どうして近所の人間が寄り付かないのか? それはもともと二年前、リリカが家族を家から立ち退かせるために、幽霊騒動を引き起こしたから____と考えるとどうだ?

死んだはずの娘が、夜になると現れる。あるいは声が聞こえる。実際は、生きたリリカの芝居だったとしても、家族は驚愕し怯えるだろう。

もしくは、根も葉もない噂話を撒き散らして、娘を失った悲しみに暮れる家族を掻き回したのかもしれない……近くに住む人間は、もうずっと前から、あそこに幽霊が出ると知っていた」

だから、誰も近づかない。
二年後、新たな噂話が流れ出しても。

「リリカは孤島のようになったあの家を、脱税の隠れ家としてミズシマに提供した。
そして自分はずっと2年間、ミズシマと共に生活していたわけだ」


リリカがそばにいる限り、ミズシマは忘れることができないだろう。
自分が轢き殺した、元恋人を。そして、だからこそ鮮明に、リリカを感じるだろう。

自分の破滅の原因となり、自分を破滅から救った、ひとりの少女として。
ミズシマはリリカから、逃げる事はできない。


まだ当時、女子高生だったリリカが、そこまで考えて『遊び』を思いついたのかはわからない。

リリカもまた、本当に、三宅雪子に嫌がらせするつもりだけだったのかもしれない。

しかしその結果、三宅雪子は死に、リリカはミズシマにとって永遠に忘れることのできない存在となった。


「じゃ、じゃあなんで、ミズシマはリリカを殺したの…?」

「そう、そこがキーポイントだ」


赤井さんは無意識のように、ハンドルを指先でコツコツと叩く。


「タナベには顔に大きな傷跡があったんだろう?」

「あったけど…それがどうかしたの?」

「その傷跡は、二年前、トラックに轢かれかけた時にできたものだとしたら?」

トラックに轢かれかけた…?

「轢かれたのは三宅雪子でしょ? タナベは関係ないよ」


「どうかな。実際、その場に何人いたのかなんて分からないだろ?

もし、事件のあった日の夜、三宅雪子とタナベが一緒に歩いていたのだとしたら?
そしてトラックに轢かれ、タナベは顔に傷を負い、三宅雪子は殺された」


ごくん、と唾を飲み込む。
タナベも、あの夜、現場にいあわせていた……?


「だとしたら、全て説明がつくんだよ。どうしてタナベが真純を助けたのか。どうして彼は死ななくてはならなかったのか」


もしかして。


そのとき、私にもひらめいた。

episode104→←episode102



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (234 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1053人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

やっち(プロフ) - 更新お待ちしてます (2022年4月22日 11時) (レス) @page23 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
みー - 主人公ちゃんも赤井さんも魅力的で何度も読み返しちゃいます、、いつかまた戻って更新されてるの楽しみにしてますね! (2021年8月31日 20時) (レス) id: fa7939d4a9 (このIDを非表示/違反報告)
S(プロフ) - 面白かったです。更新楽しみにしています!!! (2021年6月2日 2時) (レス) id: 3c947ce476 (このIDを非表示/違反報告)
ふわ - めっちゃくちゃおもしろかったです! (2021年4月23日 17時) (レス) id: 1d6a9bd8f3 (このIDを非表示/違反報告)
キサキ(プロフ) - 面白くて何度も戻ってきて読んじゃいます、更新お待ちしております頑張ってください!!! (2020年10月20日 10時) (レス) id: a8bb3b0a09 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:海星 | 作成日時:2019年9月30日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。