episode94 ページ4
「せ、世良ちゃんは…無事なの…?」
「君のおかげでな。無傷だよ」
「そ、そっか……そっか…」
ははは、と笑い声がもれる。
涙がまた、ぽたぽたとこぼれた。
「よ、よかったぁ……よかったぁ…あはは…ほんと…」
涙がとまらない。
よかった。世良ちゃんは、無事だった。本当に本当に、よかった。
また泣き出した私を、赤井さんがじっと見つめている。
思わず、えへへ、と笑いかける。しかし赤井さんは笑わなかった。
「何も良くない」
「へ?」
「何も良くないと言っている」
気まずい沈黙が流れる。
また、私は赤井さんを怒らせてしまったんだろうか。
ひやひやと見つめていると、赤井さんはため息をつく。
「お前がこんなことになって、良かったなんて言えるわけがないだろう」
「あ、うん…そ、そっか…」
ということは、もう、許してくれたんだよね? もう前みたいに普通に喋ったりしてくれるってことだよね?
「あ、あのさ…な、なんで私のこと疑ってたの……? わたし、何かした…?」
赤井さんは、少し気まずそうな顔をする。
そして話してくれた。
どうして私を疑っていたのか。
なるほど。確かに実の妹が世良ちゃんで、その妹に危害が及ぶかもしれないとなれば、あんなに怒っても仕方ないかもしれない。
っていうか、
「世良ちゃんって、赤井さんの妹だったの!!!?」
「ああ」
いやそんなアッサリ言われても……私はじろじろ赤井さんを観察する。そして、
「赤井さんって意外とシスコンなんだね!」
ギャップ萌え!! と褒めたつもりだったのに、干からびた毛虫を見るような目で見られた。解せぬ。
「まあでも……君が敵だと決めつけていたわけではない…言い訳に聞こえるかもしれないが。
車の中でのことは、…その、本当に悪かったな。
あれくらいしないと、もしお前が組織の人間だったら吐かないだろうと思ったんだ」
「じゃあ……本気で疑ってたわけじゃないの?」
「五分五分ってところだな」
赤井さんの一言に、私ははぁ、とため息をつく。
なんだかんだで、一度疑ったら私相手でも追求の手を緩めない赤井さんは、やはりプロと言うべきか、鬼畜と言うべきか。
うん、後者だな。
「…ひどいよ、赤井さん」
ぽつりとそんな言葉がもれる。
赤井さんはなにも言い訳しない。
「私は、赤井さんのこと…信じてたのに」
頰に、冷たい感触があった。
もう何度目か分からない涙を、私は流している。
ああ、私……結構傷ついてたんだなあ。
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やっち(プロフ) - 更新お待ちしてます (2022年4月22日 11時) (レス) @page23 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
みー - 主人公ちゃんも赤井さんも魅力的で何度も読み返しちゃいます、、いつかまた戻って更新されてるの楽しみにしてますね! (2021年8月31日 20時) (レス) id: fa7939d4a9 (このIDを非表示/違反報告)
S(プロフ) - 面白かったです。更新楽しみにしています!!! (2021年6月2日 2時) (レス) id: 3c947ce476 (このIDを非表示/違反報告)
ふわ - めっちゃくちゃおもしろかったです! (2021年4月23日 17時) (レス) id: 1d6a9bd8f3 (このIDを非表示/違反報告)
キサキ(プロフ) - 面白くて何度も戻ってきて読んじゃいます、更新お待ちしております頑張ってください!!! (2020年10月20日 10時) (レス) id: a8bb3b0a09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2019年9月30日 12時