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「そんな言い方? 駄々なんかこねてるからだろ」
「しょうがないじゃない。お父さんとお母さんとはぐれて心細いのよ。ね、レイくん?」
レイくんは黙って私の後ろに隠れる。
「ほらね。零さんが怒ったりするから、すっかり怖がってるじゃない。
もういいよ。私が責任を持って親御さんを見つけるから。零さんは先に戻ってて」
「何でだよ。俺も行く」
「レイくんが怖がってるのわからないの? ほら、泣きそうな顔してるじゃない」
私が指摘すると、バツが悪そうに横を向く零さん。
「とにかく、レイくんが少し落ち着いたら、係員の人に頼んで、館内放送か何かで親御さんを見つけてもらうから。
零さんは先に戻ってて」
零さんはまだ逡巡するように、私とレイくんを交互に眺めていたが、このままでは埒があかないと思ったのだろう。
わかった、とうなずいた。
「そのかわり見つかったらすぐ戻ってこいよ」
「うん。もちろん」
零さんは最後にもう一度だけ、レイくんに謎の一瞥を投げかけると、ため息をついて私たちから離れていった。
レイくんがホッとしたような表情を浮かべる。
「ごめんね、レイくん。怖がらせちゃって……でも、ほんとは優しい人なのよ。さっきのもレイくんのこと思って提案してくれたんだと思う」
零さんの声を思い出し、私がそう言うと、レイくんは何も言わずに小さくうなずいた。
「じゃあどうしようか、レイくん? もうちょっとお姉さんと遊ぶ? あっちのクッキー食べに行こうか?」
まだ半分涙目のレイくんを、勇気付ける気持ちでそう言ってみたが、レイくんはやはり無言のまま私の手を引っ張って、どんどん進んで行く。
「レイくん? どこ行くの?」
「こっち。こっち来て。おねがい」
「で、でも……そっちは……」
いつのまにか、ホールを突っ切って、係員以外立ち入り禁止の廊下の入り口まで来てしまっていた。
引き返そうとする私の手を強く引っ張り、レイくんは「こっちこっち」と言う。
「レイくん。ここから先は、関係者の人しか入っちゃだめなんだよ」
私がやんわり注意しても、レイくんはぶるぶると首を振り、「おねがい」と繰り返す。
どこか切羽詰まったようなその声に、首をかしげる。
どこか、レイくんはおかしい。
どこがおかしいのかと聞かれたら、答えられないけれど。
迷子なのに、親を探そうともせず、立ち入り禁止の廊下の奥へと私を導こうとするレイくん。
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mei(プロフ) - 素敵すぎる…!!!胸キュンしすぎて苦しい状況に陥っています。どうしましょう。 (2022年5月5日 3時) (レス) @page46 id: b5f626851a (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - 甘々零さん、ごちそうさまです。私もそんなふうに思われたい! (2022年4月21日 17時) (レス) @page46 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
belle(プロフ) - この作品を何度読み返したことか…海星さんの書く零さん好きすぎます。また書いていただけませんか?是非読みたいです (2022年4月21日 0時) (レス) @page46 id: a2ba23688b (このIDを非表示/違反報告)
推しが尊いマン(プロフ) - はあああああ番外編最高かよおおおおおおお甘々じゃねえかよおおお最高ありがとうございます (2021年1月11日 15時) (レス) id: ae253cfa81 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - めちゃくちゃキュンキュンして一気に読んでしまいました!景光と零と夢主が夢の中で3人で会話してるの見たいです!更新待ってます! (2020年3月19日 19時) (レス) id: 2a4d2a700d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2018年6月15日 16時