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「何やってるんだ?」
聞き覚えのある声にはっとして振り返ると、スーツのポケットに左手を突っ込んで、じっと私とレイくんを見下ろしている零さんがいた。(ああややこしい)
零さんはチラリとレイくんを見つめて、眉をひそめ、もう一度私に尋ねる。
「どうしたんだ?」
「迷子みたいなの」
「迷子?」
「そう。可愛いでしょ? 天使みたい」
零さんが何故か、じろじろとレイくんに無遠慮な視線を投げかけた。
レイくんといえば、私の手を固く握り締めて、私の背中の後ろに隠れて、おそるおそる零さんを見つめている。怖がられてるよ、零さん……。
「さっきケーキ食べてたら見つけたんだけど……」
「じゃあ会場の係員の人に知らせよう。歩いて見つけるより、館内放送してもらった方が早い」
あ、そうか。なるほど。
確かにその方がすぐに見つかるだろう。きっとレイくんの親御さんも心配してるだろうし。
「そうだねっ! じゃあ行こうか、レイくん」
私がそう言うと、すかさず「レイくん?」と零さんが眉を跳ねあげた。
「あ、この子レイくんって言うの!! 外見も零さんそっくりだし、すごい偶然でしょ!?」
「ふうん……」
いったいどうしたというのだ。
子供に対してあまりにも素っ気ない零さんの対応に、私は内心で首を傾げた。
なんかあったのか?
………ゴリラ心はわからん。
「ねえ、ぼく、いきたくない」
その時、レイくんが消え入りそうな声でそう告げた。
びっくりして私はレイくんを見下ろす。
レイくんは今にも泣きそうな顔で、零さんを怯えたように見つめている。
「ここにいる。Aといる」
「でも係員の人に見つけてもらった方が早いよ?」
「やだやだ」
駄々をこねるように、半分泣き顔でぶるぶると首を横にふるレイくん。
潤んだお目めがなんて可愛いんだ。ずっと見ていたい………。
「あー、泣かないで! よしよし。大丈夫だよ?」
抱きしめてよしよしと頭を撫でてあげていると、頭上から空気の読めない絶対零度の声が降ってきた。
「わがままを言うな。早く行くぞ」
零さんがギロリとレイくんを睨みつけた。
いやだから何でそんなに怒ってるの?
まだ幼稚園くらいの子だよ? わがまま言うなって……。
ライオンに睨まれた小動物のように、肩を震わせて私にしがみついてくるレイくん。
あー!
もう!
いい加減、怒ったぞ。
「ちょっと零さん! いくらなんでもそんな言い方はないんじゃない?」
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mei(プロフ) - 素敵すぎる…!!!胸キュンしすぎて苦しい状況に陥っています。どうしましょう。 (2022年5月5日 3時) (レス) @page46 id: b5f626851a (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - 甘々零さん、ごちそうさまです。私もそんなふうに思われたい! (2022年4月21日 17時) (レス) @page46 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
belle(プロフ) - この作品を何度読み返したことか…海星さんの書く零さん好きすぎます。また書いていただけませんか?是非読みたいです (2022年4月21日 0時) (レス) @page46 id: a2ba23688b (このIDを非表示/違反報告)
推しが尊いマン(プロフ) - はあああああ番外編最高かよおおおおおおお甘々じゃねえかよおおお最高ありがとうございます (2021年1月11日 15時) (レス) id: ae253cfa81 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - めちゃくちゃキュンキュンして一気に読んでしまいました!景光と零と夢主が夢の中で3人で会話してるの見たいです!更新待ってます! (2020年3月19日 19時) (レス) id: 2a4d2a700d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2018年6月15日 16時