零と霊編20 ページ46
安室さんの部屋も整理整頓されてたけど、ここの部屋はもっと殺風景というか__________
生活感がなさすぎて怖いよ。
“降谷さん”の住む家は、都内の超高級マンションの高層階。セキュリティも当然しっかりしていて、一人で住むには勿体ない広さではある。
そんなことをぼんやりと思っていたら、シャワーから上がった安室さんが出てきて、本日二回目の悲鳴をあげる羽目になった。
ボクサーパンツしか身につけていない安室さんは、いつもの彼には考えられないほどガサツな表情で、冷蔵庫から炭酸水を取り出してガブ飲みしてる。
えー……安室さんって、こんな「男」みたいな感じの人だっけ?
整った横顔からシャワーの水滴が滑り落ちていくのを見て、まさに水も滴るいい男だな、と妙に納得した。
てか色気が凄すぎて直視できない……。
ゴクゴクと水を飲むたびに、お腹の筋肉がかすかに引きつっている。
「……あつい」
呟いた安室さんは、飲み干したペットボトル片手で握りつぶしてゴミ箱に捨てた。
「安室さん、寝てください。お願いしますから」
必死で頼むが、安室さんは下だけジーンズを履くと、上は上半身裸のままで、仕事の続きを始めてしまった。
「今日は午後からなら、病院に行けそうだな……」
だからお見舞いはいいってば。
いい加減寝ないと、安室さんが倒れてしまう。いくら悪霊を祓ったところで、体に蓄積された疲労自体が消えたわけではないのだ。
私はそうっと安室さんの頭に手を伸ばす。
当然、今は黒い靄はないので、私の手は安室さんの頭を撫でることはできない。
なのに私が撫で始めると、安室さんははっとしたように顔を上げた。
「……Aさん?」
……もう。こういう時に名前呼ぶの狡いって。
「安室さん、寝てください。お願いしますから」
安室さんが、すっとを細める。
髪をかきあげて、ソファにもたれこんだ。
私はよしよしと頭を撫でる。
「Aさん……」
安室さんの瞼がだんだん下がってきた。
腕がだらりと垂れ下がり、持っていた書類の束が、パサリ、と床に落ちた。
安室さんがドサッ、とソファに横になった。
かすかな寝息が聞こえてくる。
はぁ、やっと寝てくれた……よかった。
毛布をかけてあげたかったけど、霊体の私には何もできない。
安室さんの寝顔を見つめながら、寝ている時は案外あどけない顔をしているんだな、とこっそり笑ってしまった。
♡ ♡ ♡
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ん - え、え、、突き落とされて刺されそうになったのに許す意味が分からない…周りのみんな甘ちゃん過ぎる… (2022年6月11日 4時) (レス) id: b95582035d (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。続きが気になって読んじゃいました。よろしくお願いします。 (2019年2月7日 9時) (レス) id: 16ee8f1076 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - salomeさん» ハマっていただけて、本当に嬉しいです……! 更新頑張れます! ありがとうございます! (2018年5月17日 17時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
salome - いつも見ていますこの小説かなりハマりました更新されるたびに面白く感じたりハラハラドキドキしたり今回夢主がストーカーに刺されて重症になって安室さんも夢主に対して自覚からマジ恋に目覚めて夢主早く意識覚まして安室さんを安心させて欲しい (2018年5月17日 14時) (レス) id: 31aa9c013b (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 秋都さん» 朝から嬉しくて号泣です……ありがとうございます……! (2018年5月17日 7時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2018年5月2日 21時