零と霊編3 ページ29
「Aさんからストーカー被害を受けてるって聞いて、それからはほとんど毎日、沖矢さんが警護してたんだ。
安室さんがAさんをホテルまで送れない日や、誰かと一緒じゃない時はいつも。
だけど、僕らもお姉さんも、ストーカーの正体は山本ルミさんだと思ってたから、今日、ルミさんが逮捕されてもう安全だって思ったんだ。
それで……それで、僕と沖矢さんは……お姉さんを一人で帰してしちまった……そこを狙われてっ……」
コナン君の声に、ぷつりぷつりと理性を繋ぎとめていく糸が切れていく。
冷静になれ、と頭の隅で最後の警告が発せられたが、それすら聞こえないほどに、全ての感覚が遠のいていく。
「だから……僕ら……あ、安室さんっ！！！？」
コナン君が叫び声を上げたのと、俺が沖矢の胸ぐらを掴んだのが同時だった。
拳を振り上げ、殴り飛ばす。
よろめいた沖矢の体に当たって、病室の隅に置かれていた小物棚が、激しい音をたてて床に倒れた。
続けざまに繰り出した拳を沖矢に掴まれ、そのまま逆に蹴り飛ばされる。
かはっ、と胃の奥から何かが逆流してくるような感覚に襲われたが、それでも構わずに飛びかかって、沖矢の体を壁に押し付けた。
「落ち着いてください、安室さん！！」
高木刑事が叫んだが、もう止められなかった。
「ふざけるなよ」
沖矢の_______こいつの無感情な瞳が、殺したいほどに憎かった。
いつもそうだ、こいつはいつも……
「どうして俺に言わなかった？ なんで黙っていた？ 俺が知っていたら、絶対に一人で帰したりはしなかった」
喉元を締め上げると、沖矢も俺の胸ぐらを掴む。
「こんなことをしたって、彼女が目覚めるわけじゃない」
「黙れ！！！」
安室さん、と駆け寄ってきたコナン君を振り切って叫ぶ。
「俺が知っていたら……彼女をこんな目に合わせたりはしなかった。
俺なら……俺なら、Aを守れたのに……！！！！」
「ちょっと、いい加減にしてください！ 落ち着いてくださいよ、二人とも！」
高木刑事が俺を沖矢から引き剥がそうとしたが、俺はその手を振り払う。
「違うんだ……！ 違うんだよ、安室さん。ねえ聞いて」
コナン君が、俺の足にまとわりついた。
それすら今は煩わしくて、思わず睨みつけたら、まっすぐな目で見返された。
「お姉さんが黙っててって……そう言ったんだよ。安室さんには、黙っててくれって」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2452人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ん - え、え、、突き落とされて刺されそうになったのに許す意味が分からない…周りのみんな甘ちゃん過ぎる… (2022年6月11日 4時) (
レス) id: b95582035d (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。続きが気になって読んじゃいました。よろしくお願いします。 (2019年2月7日 9時) (レス) id: 16ee8f1076 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - salomeさん» ハマっていただけて、本当に嬉しいです……！ 更新頑張れます！ ありがとうございます！ (2018年5月17日 17時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
salome - いつも見ていますこの小説かなりハマりました更新されるたびに面白く感じたりハラハラドキドキしたり今回夢主がストーカーに刺されて重症になって安室さんも夢主に対して自覚からマジ恋に目覚めて夢主早く意識覚まして安室さんを安心させて欲しい (2018年5月17日 14時) (レス) id: 31aa9c013b (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 秋都さん» 朝から嬉しくて号泣です……ありがとうございます……！ (2018年5月17日 7時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：海星
| 作成日時：2018年5月2日 21時
