ジャックザリッパー編17 ページ17
本当はわかってた。
たぶん、安室さんは気がついてるってことも。
彼の態度が日に日に変化して、変わらない優しさの中に、冷めた感情を向けられていることも。
わかってたけど、とめられなかった。
あの日。いつものように大学帰りにポアロによると、安室さんがいなかった。
おかしいなぁ、いつもは大抵いる曜日なのに。そう思って梓さんにそれとなく尋ねてみた。
「ああ、安室さんならね、今日は京都に日帰り旅行って行ってますよ」
京都に日帰り旅行。
ぷち、と心に穴が空いた気がした。
気がついたら、安室さんに電話していた。
彼氏がまたつけてきて。
東京駅にいて。
すごく怖い。
いますぐ来て。
「分かりました。いますぐ行きますから、できるだけ人の多い所にいてくださいね」
そういつもみたいに優しく言う。
安室さんは来てくれる。
どんなに離れていたって、わたしがお願いすれば、いつだって。
京都から飛んで帰ってきてくれた安室さん。だけどわたしにはそのまま帰れと言う。
どうして？
なんで一緒に帰ってくれないの？
こんなに怖いって言ってるのに。
その声にわっと泣き出すと、慌てたように「じゃあ一緒に帰りましょうか」と言ってくれた。
でもそれは、どこか私を嗜めているような口調でもあった。
そんなに泣いたところで、君のことを好きになるわけじゃないんだから、って。
安室さんと二人、帰りの電車に揺られていると安室さんの携帯が鳴った。
安室さんがポケットから携帯を取り出した拍子に、ぽとりと何かが落ちる。
安室さんは気がついていないようだ。
そろそろと手を伸ばす。
それはお守りだった。
無病息災。
そんな言葉が刻まれている。
無病息災
むびょうそくさい
こんなもの、前は持ってなかった。
こんなもの、わたしは知らない。
「あの、これ、落ちました……」
安室さんに差し出したら、安室さんが驚いた顔をして、それから嬉しそうに笑った。
わたしと一緒にいるときには見たことがない、ぱっと花が咲いたような笑顔。
「ありがとうございます」
そう言って大切そうにお守りを仕舞う。
誰にもらったんだろう。
むびょうそくさい。むびょうそくさい。
病気になりませんように。
安室さんがいつも元気でいられますように。
「ダメじゃないですか、安室さん。無理しないでっていつも言ってるのに」
ポアロの店内に響く、あの女の子の声。
それがお守りの文字と重なった。
あの子だ、と思った。
◇ ◇
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ん - え、え、、突き落とされて刺されそうになったのに許す意味が分からない…周りのみんな甘ちゃん過ぎる… (2022年6月11日 4時) (
レス) id: b95582035d (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。続きが気になって読んじゃいました。よろしくお願いします。 (2019年2月7日 9時) (レス) id: 16ee8f1076 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - salomeさん» ハマっていただけて、本当に嬉しいです……！ 更新頑張れます！ ありがとうございます！ (2018年5月17日 17時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
salome - いつも見ていますこの小説かなりハマりました更新されるたびに面白く感じたりハラハラドキドキしたり今回夢主がストーカーに刺されて重症になって安室さんも夢主に対して自覚からマジ恋に目覚めて夢主早く意識覚まして安室さんを安心させて欲しい (2018年5月17日 14時) (レス) id: 31aa9c013b (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 秋都さん» 朝から嬉しくて号泣です……ありがとうございます……！ (2018年5月17日 7時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2018年5月2日 21時
