零と霊編23 ページ49
私の言葉に、一瞬嬉しそうな顔をする安室さん。だがすぐに、ぶすっとした表情でそっぽを向く。
「どうせ夢の話なんだろ」
拗ねたように呟く安室さん。可愛い。
「ち、違いますよ! 本当です!」
確かにこれは夢だけど、でも夢じゃない。少なくとも私にとっては。
だからこの気持ちだって本物だ。
「よく言うよ。キスくらいで真っ赤になってるくせに」
安室さんはじろじろと私を見つめた。
うるさいな、こっちはあんたみたいに恋愛経験値なんて豊富じゃないんだよ!
今度は私がそっぽを向く番だ。
そんな私を見て、面白そうに笑う安室さん。いつもの意地悪な感じが戻ってきた。
安室さんが、黙って私を引き寄せる。
抱きかかえられるようにして、私は安室さんに体を預けた。
お互いの温もりは相変わらず感じないけど、安室さんの胸の中は、なんだか安心した。
安室さんが、ちゅ、と額にキスを落とす。
それがくすぐったくて、少し目を細めたら、何度も何度もキスされた。
「……ちょっとは慣れた? キス」
意地悪な瞳で聞いてくる安室さん。
いや、これが本当の彼なのか。降谷さんなのか。
私が真っ赤になって、身動きできないことも承知の上で、彼はこういう意地悪をする。
「……ひ、人を虐めて楽しいですか」
「A限定だよ」
「くたばれえええ」
安室さん_____いや、今や“降谷さん”となった彼の腕の中で、羞恥と屈辱に震えていたら、何故か降谷さんは、私をもう一度ソファに押し倒した。
押し倒した私の上に、覆いかぶさるようにする降谷さん。
顔が近い。
「……な、何してるんですか」
ふわっと石鹸の香りが香った。それから降谷さんの匂いも。
やば。
これは……なんていうか……
「夢だから何してもいいよな。夢だから」
「いいわけないでしょ!! いい加減してください」
抗議を無視して、降谷さんがそうっと私の耳に唇を近づける。
「可愛い、A」
びくっと震える。
降谷さんが笑って、私の耳たぶをそっと甘噛みした。
ひええええ。むりむりむり。
待って待って待って。
耳の奥にキスされると、背中の奥から疼くように体が跳ねる。
いやいやと首を振るが、降谷さんは聞き入れてくれなかった。
「ふ、ふるやさん……」
思わず涙を溜めた目で見上げたら、一瞬何かと葛藤するようにぐっと歯を食いしばって、それからため息をついて、降谷さんは私を解放した。
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ん - え、え、、突き落とされて刺されそうになったのに許す意味が分からない…周りのみんな甘ちゃん過ぎる… (2022年6月11日 4時) (レス) id: b95582035d (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。続きが気になって読んじゃいました。よろしくお願いします。 (2019年2月7日 9時) (レス) id: 16ee8f1076 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - salomeさん» ハマっていただけて、本当に嬉しいです……! 更新頑張れます! ありがとうございます! (2018年5月17日 17時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
salome - いつも見ていますこの小説かなりハマりました更新されるたびに面白く感じたりハラハラドキドキしたり今回夢主がストーカーに刺されて重症になって安室さんも夢主に対して自覚からマジ恋に目覚めて夢主早く意識覚まして安室さんを安心させて欲しい (2018年5月17日 14時) (レス) id: 31aa9c013b (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 秋都さん» 朝から嬉しくて号泣です……ありがとうございます……! (2018年5月17日 7時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2018年5月2日 21時