零と霊編7 ページ33
私はちらりと安室さんを見つめた。
安室さんはベッドに横たわった私を見つめている。すると何を思ったか、いきなり私の手をぎゅっと握った。
『え!!? ちょ、安室さん! 何やってんの!?』
『霊体になっても相変わらずお熱いな、お前ら』
『ちょ、離して!! 安室さん離して!!』
私の必死の叫び声もむなしく、安室さんは握った手を離さない。
眠った私(正確には体)を見つめる安室さんは、ひどく悲しげだった。
こんな顔、させたかったわけじゃないのに……どうしてこんなことになっちゃったんだろ。
「コナン君が、Aさんを助けてくれたんだよね?」
安室さんが口を開いた。
そういえば、刺されて意識を失う直前、誰かの呼ぶ声が聞こえた気がした。
「沖矢さんと僕だよ。お姉さんの後を慌てて追ったら、もう刺された後で……」
「犯人を取り押さえてくれたのも、沖矢さんとコナン君なんですよ」
沖矢さんの名前を出したコナン君に、安室さんが嫌そうな顔をすると、高木刑事が横からさりげなくフォローを入れた。
「……そうですか」
「二人のおかげですよ。発見が遅れていたら……たぶん……」
高木刑事の言葉に、ぶるりと身が震える。
コナン君、沖矢さん、マジ感謝だよ……!! 本当にありがとう……!! 意識が戻ったらハーゲンダッツでも奢ります。
安室さんがそっと私の手を離した。
病室を出て行こうとする安室さんの手を、コナン君が掴む。
「どこに行くの?」
「僕は一旦帰るよ。Aさんのホテルに行って着替えとか取ってこないとダメだろ」
「そ、そっか……」
安室さんが沖矢さんの横を通り過ぎる時、かすかにお辞儀した。
「……ありがとう、ございます。Aさんを助けていただいて」
「……いえ、こちらこそ。こんなことになってしまって、申し訳なかった」
沖矢さんもかすかに頭を下げる。
目線は合わさぬまま、安室さんはそのまま病室を出て行く。
私とスコッチさんも安室さんの後を追って、ぷかぷかと浮かぶ霊体のまま病室を出た。
『スコッチさんって、いつもこんな風景を見てたんだね……』
空中から見る街並みは、何とも新鮮だ。
安室さんは車に乗り込んで、今、私の泊まっていたホテルに向かっているようだ。
ん?
ていうかちょっと待てよ。
安室さん、着替え取りに行くって言ってなかった?
『言ってたな』
『え" え" え " え" え" え"え"』
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ん - え、え、、突き落とされて刺されそうになったのに許す意味が分からない…周りのみんな甘ちゃん過ぎる… (2022年6月11日 4時) (レス) id: b95582035d (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。続きが気になって読んじゃいました。よろしくお願いします。 (2019年2月7日 9時) (レス) id: 16ee8f1076 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - salomeさん» ハマっていただけて、本当に嬉しいです……! 更新頑張れます! ありがとうございます! (2018年5月17日 17時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
salome - いつも見ていますこの小説かなりハマりました更新されるたびに面白く感じたりハラハラドキドキしたり今回夢主がストーカーに刺されて重症になって安室さんも夢主に対して自覚からマジ恋に目覚めて夢主早く意識覚まして安室さんを安心させて欲しい (2018年5月17日 14時) (レス) id: 31aa9c013b (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 秋都さん» 朝から嬉しくて号泣です……ありがとうございます……! (2018年5月17日 7時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2018年5月2日 21時