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ジャックザリッパー編26 ページ26

だけど私が止まれば靴音は止まり、歩き始めれば、夕闇の町に鈍い音が再び響き出す。
早歩きになれば、つられるように音のテンポも早くなる。


つけられてる……?

うそ。

そんなまさか。


そう思うのに、なんだろう。

この、経験したことのないほどの恐怖は。

足元を絡め取られるような、

喉を締め付けられるような、

まるで、まるで……

誰かが、私を殺そうとしているような……


まさかね。

そんなわけないよね。

もうすぐ行けば、ホテルだ。もうすぐだ。


自分に言い聞かせる。

足が早くなる。

呼吸が乱れる。


怖い怖い、怖い。

誰か、助けて。


「Aちゃん」

がし、と腕を掴まれた。
ねっとりとした吐息が、鼓膜にまとわりつく。
血の気が引いて行くのを感じる。

そろそろと振り向いて、凍りついた。


「あ、あなたは……」


「君が悪いよね……俺がこんなに愛してるのに…。
君は俺の愛を無視して、捨てて、僕を殺したんだ」


にっこりと、スイカのような真っ赤な口が開いて、目は私を舐め回すように。

助けて。


助けてよ。


「安室さん……!!!!」


そう叫んだのが先か、夕闇に不気味に煌めくナイフが光ったのが先か。


「死ね」


脇腹に想像を絶する激痛が走って、かっと炙られたように体が熱くなった。
のたうち回るように倒れこんで、口の中に鉄の味が広がって行くのを感じた。


遠くの方で、誰かが私の名前を呼んでいる。

それに答えることもできぬまま、私の意識は深い闇の底へと滑り落ちていった。

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- え、え、、突き落とされて刺されそうになったのに許す意味が分からない…周りのみんな甘ちゃん過ぎる… (2022年6月11日 4時) (レス) id: b95582035d (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。続きが気になって読んじゃいました。よろしくお願いします。 (2019年2月7日 9時) (レス) id: 16ee8f1076 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - salomeさん» ハマっていただけて、本当に嬉しいです……! 更新頑張れます! ありがとうございます! (2018年5月17日 17時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
salome - いつも見ていますこの小説かなりハマりました更新されるたびに面白く感じたりハラハラドキドキしたり今回夢主がストーカーに刺されて重症になって安室さんも夢主に対して自覚からマジ恋に目覚めて夢主早く意識覚まして安室さんを安心させて欲しい (2018年5月17日 14時) (レス) id: 31aa9c013b (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 秋都さん» 朝から嬉しくて号泣です……ありがとうございます……! (2018年5月17日 7時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:海星 | 作成日時:2018年5月2日 21時

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