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ジャックザリッパー編1 ページ1

誰かが名前を呼んでいた。


れいくん


れいくん…


れい……


優しくて、どこか懐かしい声。でもどこで聞いたかは思い出せなかった。

その声に応えるように、無意識に俺もその誰かの名前を呼び返す。


何度も。


何度も。


姿は全く見えないのに、誰かがそこにいる。
俺は手探りで、その誰かを引き寄せた。


暖かい。
表面がただ熱いというわけじゃなくて、抱きしめていると内側から暖かくなるような、そんなじんわりとした温度にひどく安心する。


俺はまた、その人の名前を呼ぶ。


すると姿の見えないその人は、くすりと笑って、俺をぎゅっと抱きしめた。



おつかれさま、れいくん。


よくがんばったね。



まるで小さい子供に言い聞かせるみたいに。
優しく優しく、俺の頭を撫でる。


俺はその人に体を預けて、その温もりがどこにも行ってしまわないように精一杯抱きしめた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


安室side


はっと目が覚めた。胸ポケットに入れていた携帯がぶるぶると震えている。

肩ごしに人肌の温もりと吐息を感じ、軽く頭が混乱した。
思わず手探りすれば、柔らかい背中と、俺の体に当てられた控えめな胸の膨らみの感触。俺の腕の中にうずくまるようにして小さく寝息をたてて眠っているAがいた。


………嘘だろ。


なんでこんなことになってるんだ。


必死に記憶の奥を搔きまわすが、全く覚えがない。


でもこの体勢は、多分、紛れもなく……俺が彼女を抱きしめて眠ってしまったんだろうな。


「……マジか」

そういえば、Aに「少し休んでください」と言われて、目を瞑って……そこから記憶がない。
つまり、目を瞑ってすぐに寝たってことか。しかもAを抱き枕にして。


「マジか……」


もう一度一人で呟いて、そろそろと起き上がる。
Aはまだ眠っていて、起きる気配はなかった。どうしよう。いやどうしようって、俺がしたことなんだけど。
どうすればいいんだ。

床で眠っていたせいで、ひどく足腰が痛む。
携帯電話がポケットで震え続けていた。俺はとりあえず電話を取る。

ジャックザリッパー編2→



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- え、え、、突き落とされて刺されそうになったのに許す意味が分からない…周りのみんな甘ちゃん過ぎる… (2022年6月11日 4時) (レス) id: b95582035d (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。続きが気になって読んじゃいました。よろしくお願いします。 (2019年2月7日 9時) (レス) id: 16ee8f1076 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - salomeさん» ハマっていただけて、本当に嬉しいです……! 更新頑張れます! ありがとうございます! (2018年5月17日 17時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
salome - いつも見ていますこの小説かなりハマりました更新されるたびに面白く感じたりハラハラドキドキしたり今回夢主がストーカーに刺されて重症になって安室さんも夢主に対して自覚からマジ恋に目覚めて夢主早く意識覚まして安室さんを安心させて欲しい (2018年5月17日 14時) (レス) id: 31aa9c013b (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 秋都さん» 朝から嬉しくて号泣です……ありがとうございます……! (2018年5月17日 7時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:海星 | 作成日時:2018年5月2日 21時

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