【舞台俳優】がんばれ、丸野くん！

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Aside




｢おー、おはよう。荒木宏文です。よろしくね｣




優しく笑いかけてくださった荒木さん。荒木さんの演技を見たときはキャラが目の前に出てきてしまったのではないかと錯覚してしまう程の演技力で、僕もこんな風になりたい、と何度も思った。






｢あれ、俺になんか付いてる？｣


『っ！！あっ！すみません！あの、ほんとに、』


｢大丈夫だよ、これから頑張ろうね｣




無意識のうちにじいっと荒木さんを見ていたみたいだ。特に理由もないのに見るなんて失礼に当たるかもしれない。しかし、荒木さんは優しく声をかけてくださって頑張ろうね、と肩をぽんと叩いてくれた。本当に優しい先輩方に囲まれた良いカンパニーなんだと改めて実感することになった。





｢もう少ししたら開始しますので、用事等済ませたらご自身のお席にお座りください！｣




スタッフさんの一声で皆さんが席に座ったり、マイクの準備をしたりしている。そろそろ顔合わせが始まって、終わったら本読みと立ち稽古。この顔合わせが終わったら、演出の茅野さんにも挨拶をしに行こう。これからお世話になるカンパニーの代表にあたる方なのだから。僕はこの舞台が役者としてのスタートになる。右も左も分からない僕を導いてくれるのはこのカンパニーになる。




・




｢…ありがとうございます、それじゃあ、丸野さん。｣



ついに僕の番が来てしまった。挨拶という些細なことでもここで印象が決まるし、下手なことは出来ない。俳優としては産まれたてのひよこだけど、先輩たちに食らいついて頑張らなくてはならない。この舞台が始まる前に約3ヶ月間、殺陣やダンス、歌など練習した。必死になって、先輩たちに追いつけるように。



『…はい、皆さん初めまして。新キャストとしてこの【ミュージカル刀剣乱舞】に参加させていただくことになりました。白山吉光役の丸野Aです。このような大きなカンパニーで演じさせて頂だけること嬉しく思っています。僕にとって演技や舞台は初めてで多くの方にご迷惑をおかけするかもしれません。至らぬ点ばかりですがご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします。』



最後に頭を下げると、ぱちぱちと拍手が聞こえる。スタッフさんの声で何も無かったと安心して椅子に腰を下ろす。やっと始まった、僕の俳優としての舞台が。多くの方に感動と勇気を与えられる、そんな役者になりたい。





｢じゃあ、本読みに入りますのでご準備の方よろしくお願いします！｣

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