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”いや…今日はさすがにね。我慢出来る自信ないっす。笑”
そう苦笑いする彼に混浴は断られてしまったため、手早く別々にシャワーを済ませた。
揃ってベッドに入ったのは、23時。
篤「ね、いなげやって静岡にはないの知ってた?」
「そうなの?」
篤「そ。あれは都会のスーパーだからね。」
「でも確か、神奈川とかにもあったような気がするけど、」
篤「バカ。静岡県民からしたら神奈川も十分都会だから。」
「…笑」
篤「あ、今馬鹿にしたっしょ。」
相変わらずくだらない話で少しばかり笑わせてもらった後、
明日の大舞台に備え、瞳を綴じる。
「………」
二ヶ月振りの彼の胸の中は、とても安心する。
心地よくて、温かくて、愛しくて、優しくて、
「…」
でも、
鼓動はとても緩やかなはずなのに、
布団の中で微かに震えている、指先。
「…、」
抑えるようにギュッと拳を握った時、
篤「ふっ、」
大きくて温かい掌が、
震えるそれを優しく包んでくれたー
篤「意外とね、大したことねーよ。」
「え?」
篤「W杯。」
「………」
篤「どんな景色なんだろうとか思ってたけどさ、11対11でボールは一個で、ゴールは二つっていう普通のサッカーだった。大会が違うだけでね。」
それはくだらない話をしている時と、
同じような口調だった。
あまり強弱のない、少し高い声のそれは、
やはり簡単に私の心まで到達してしまう。
篤「あれだって一緒でしょ。まぁ確かに、見た目は奇抜だけど?笑」
「………」
篤「でっかい舞台の上にピアノは一つ。それをAが弾くだけ。そんなのいつもやってんじゃん。」
あの大舞台で一際輝いていた貴方に言われれば、どんな激励よりも心強い。
また、少し強くなれた気がした。
強くなれた。
「?」
照れ臭そうに、そっと私の髪を梳かす彼。
篤「なんかさ、薄っすら覚えてんだよね。誰かさんにこうしてもらった時、すげー熟睡出来たの。」
ーーvorwarts…
<篤人くんにそうしてもらってるとね、いつもぐっすり眠れるの。リラックス効果高いみたい。笑>
<だから今日は私の番。>
ーー
篤「だから今日は、俺の番。」
震える手を包む、左手。
優しく髪を梳く、右手。
篤「…おやすみ。」
きっと明日 あの舞台の上で、
たくさんの想いたちが、
私の音を輝かせてくれるだろうーー
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向日葵(プロフ) - 久しぶりにノクターンを全部読みました!!!やっぱり感動するしいいお話だなって思いました。早くきらきら星の続きが読みたいなって改めて思いました。。。待ってますね!! (2015年11月21日 15時) (レス) id: 625bd2f9b0 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ - 初めまして。この小説を初めて読んだ時にコメントさせてもらおうかなと思いましたが全部読んでからと思って、今日になりました。最初に読んだ時から引き込まれて、毎朝の日課になって、朝が楽しみになりました笑少しでも私の気持ちが伝わっていればと思います(o^^o) (2014年10月24日 16時) (レス) id: 89de68dc72 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 完結おめでとうございます!そして、素敵なお話を読ませて頂いて本当にありがとうございます。温かくて、柔らかくて、読んでるだけでこっちが幸せな気持ちになってしまいました。なんだかいつまでもこの2人を見ていたい、と思ってしまう程です。このお話が大好きです。 (2014年10月4日 9時) (レス) id: 02821e7e3d (このIDを非表示/違反報告)
茜(プロフ) - 本当に面白かったです!クラシックは全然知らなかったんですけど、でてくる曲全てが気になってたくさん聞きました笑これからも頑張ってください!!! (2014年9月9日 17時) (レス) id: fd4e1ac951 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - 初めてコメントします!!!!素敵なお話をありがとうございます!毎日読んでて幸せでした!こんな素敵な作品初めてです!素敵すぎて、なかなか抜け出せません…(笑)リピートで読んでいます。この二人が大好きなので、続編楽しみにしています!素敵な作品ありがとう (2014年8月26日 23時) (レス) id: 3e907fcd61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:laiz | 作成日時:2014年6月28日 20時