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「…ビックリした、」
呆然としている私を尻目に、”だから、メールしたじゃん。”と部屋へと入ってくる彼。
スーツケースをその辺りに放り、早速ベッドに沈むと、”あー疲れた”と大きな溜息をついて、
篤「ホテルマンさん、お水いただけます?」
つい先程まで自分がホテルマンを演じていたくせに、もう飽きたようだ。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し彼に渡せば、”悪いね。はい、チップ。”と脱ぎたての靴下を私にくれた。
篤「ちょ、人が水飲んでるとこあんま見ないでもらえます?」
「だって、会えるのは本番が終わってからだと思ってたから、」
”嬉しい?”と、何故か私の髪を梳きながら急に甘い空気を漂わせる彼にドキッとしてしまう。
でも、そんな空気が流れたのも一瞬のことで、
篤「はい、これもういらないから置いてきて。」
「………」
手渡されたペットボトルが、私を通常の空気へと引き戻す。
篤「あ、ついでにジャージ取って。」
背中から聞こえた声が、益々日常へと引き戻す。
ミネラルウォーターを冷蔵庫にしまい、彼が脱ぎ捨てた服たちを畳む。スーツケースからジャージを取り出し、その代わりに今畳んだ服たちを入れて、
不思議だ。
いつもの日常のように彼の世話を焼いていると、緊張していることなんてすっかり忘れていた。
ベッドにはいつものジャージを着た彼の姿。
寝そべりながらiPhoneを弄る 日常の光景。
彼がそれを敢えてやっているのか否かは知らないが、煩かった鼓動は自然と落ち着いてゆくー
篤「ね、開けないの?」
「開けてもいい?」
篤「さぁ?いいんじゃない?」
ベッドの端に置かれた、真っ赤なリボン付きの大きな箱。
リボンを解き蓋に手をかければ、彼はiPhoneを弄りながらも目線はしっかり私を捉えていた。
「………わー、」
蓋を開けた瞬間に広がったのは、白。
真っ白なそれはあまりに綺麗で、美しくて、
それはまるで…
「…なんだか、ウエディングドレスみたい。」
篤「ふっ。まぁ、ある意味ね。」
「?」
ドレスを自分にあてがい、彼を見る。
”いいんじゃん?悪くない。”と視線を逸らした彼に、頬が緩んだ。
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向日葵(プロフ) - 久しぶりにノクターンを全部読みました!!!やっぱり感動するしいいお話だなって思いました。早くきらきら星の続きが読みたいなって改めて思いました。。。待ってますね!! (2015年11月21日 15時) (レス) id: 625bd2f9b0 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ - 初めまして。この小説を初めて読んだ時にコメントさせてもらおうかなと思いましたが全部読んでからと思って、今日になりました。最初に読んだ時から引き込まれて、毎朝の日課になって、朝が楽しみになりました笑少しでも私の気持ちが伝わっていればと思います(o^^o) (2014年10月24日 16時) (レス) id: 89de68dc72 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 完結おめでとうございます!そして、素敵なお話を読ませて頂いて本当にありがとうございます。温かくて、柔らかくて、読んでるだけでこっちが幸せな気持ちになってしまいました。なんだかいつまでもこの2人を見ていたい、と思ってしまう程です。このお話が大好きです。 (2014年10月4日 9時) (レス) id: 02821e7e3d (このIDを非表示/違反報告)
茜(プロフ) - 本当に面白かったです!クラシックは全然知らなかったんですけど、でてくる曲全てが気になってたくさん聞きました笑これからも頑張ってください!!! (2014年9月9日 17時) (レス) id: fd4e1ac951 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - 初めてコメントします!!!!素敵なお話をありがとうございます!毎日読んでて幸せでした!こんな素敵な作品初めてです!素敵すぎて、なかなか抜け出せません…(笑)リピートで読んでいます。この二人が大好きなので、続編楽しみにしています!素敵な作品ありがとう (2014年8月26日 23時) (レス) id: 3e907fcd61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:laiz | 作成日時:2014年6月28日 20時