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数十秒後、結局あの台詞をもう一度言わされたのだが、彼は”あ、やっぱそんな萌えねー”とさらっとそれを吐き捨てた。
不機嫌になった私に一応平謝りをしているけれど、その手はちゃっかり小さな四角いビニールを破いている。
篤「またまたご無沙汰しております。
一ヶ月?いや、一ヶ月半か。」
せっせとそれを装着しながら、それに向かってボソボソ話しかけている彼。
”まだレスの範疇だな”なんて結論づけながら、私の脚をグイッと引いて、
篤「痛い?……んですよね。知ってる。笑」
私が頷く前に、そう言って納得する彼。
”しゃーない。俺らレスだから。”と笑う顔は、自分で言っておきながら虚しくなったのか、切なげに眉を下げていた。
篤「ね、なんかリクエストは?」
「え?」
篤「何でもしますよ、今日は。スペシャルお詫びデーですから。笑」
何だかそのネーミングは如何わしいお店のようで気に入らないが、してほしいことは案外すぐに思いついた。
人間というのは不思議で、”普段あり得ない”ことに対しては期待すらもしないのに、それを目の当たりにしてしまうと”もう一度”と欲が出る生き物なのかもしれない。
四年に一度では、足りないと。
「じゃあ、もう一回言ってほしい。」
篤「あ?何を?」
「今日、亮輔くんに言ってたこと。」
一生懸命腰を動かしながら、考えている彼。
数秒後に私のリクエストが何であるのかに気づいたのだろう。動きを止めると、荒い呼吸の中に”調子乗んな。”と低い声を忍ばせる。
篤「それ別料金だから。」
「え?」
篤「申し訳ございませんが、スペシャルお詫びデーのセットには含まれておりません。」
再び彼が腰を動かし始めると、私にはもう笑う余裕は残されていない。
ただ先ほどより一層与えられる強い刺激に、耐えることに必死で、
篤「てかさ、俺らべちゃくちゃ喋ってっからムードないんじゃないの?」
「うん、」
篤「じゃあもう、私語厳禁ね。」
「うん、」
もう頷くことしか出来ない私の額に、彼が一つ口づけを落とす。
それは瞼に、頬に、首へと移って、
「…っ、」
そして耳元でチュッと音が鳴った時、
微かに聴こえた。
篤「………ね、…今日二回言うんだから、次は12年後まで言わないよ?」
「…、」
あまりに艶っぽく、柔らかな彼の声がー
篤「………すげー…………好き。」ーー
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向日葵(プロフ) - 久しぶりにノクターンを全部読みました!!!やっぱり感動するしいいお話だなって思いました。早くきらきら星の続きが読みたいなって改めて思いました。。。待ってますね!! (2015年11月21日 15時) (レス) id: 625bd2f9b0 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ - 初めまして。この小説を初めて読んだ時にコメントさせてもらおうかなと思いましたが全部読んでからと思って、今日になりました。最初に読んだ時から引き込まれて、毎朝の日課になって、朝が楽しみになりました笑少しでも私の気持ちが伝わっていればと思います(o^^o) (2014年10月24日 16時) (レス) id: 89de68dc72 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 完結おめでとうございます!そして、素敵なお話を読ませて頂いて本当にありがとうございます。温かくて、柔らかくて、読んでるだけでこっちが幸せな気持ちになってしまいました。なんだかいつまでもこの2人を見ていたい、と思ってしまう程です。このお話が大好きです。 (2014年10月4日 9時) (レス) id: 02821e7e3d (このIDを非表示/違反報告)
茜(プロフ) - 本当に面白かったです!クラシックは全然知らなかったんですけど、でてくる曲全てが気になってたくさん聞きました笑これからも頑張ってください!!! (2014年9月9日 17時) (レス) id: fd4e1ac951 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - 初めてコメントします!!!!素敵なお話をありがとうございます!毎日読んでて幸せでした!こんな素敵な作品初めてです!素敵すぎて、なかなか抜け出せません…(笑)リピートで読んでいます。この二人が大好きなので、続編楽しみにしています!素敵な作品ありがとう (2014年8月26日 23時) (レス) id: 3e907fcd61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:laiz | 作成日時:2014年6月28日 20時