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野「セミファイナルはどうなるかしらね?」

「………」

野「あなたの演奏、ちゃんと聴いてるから。」






"楽しみにしてる。"と笑い声と共に残された言葉は、揺れた心を重くした。

カツカツと鳴るヒールの音が、背中で響く。






松「うっわ。性格悪っ。」






わざとなのかそうでないのかは分からないが、彼女に届くようにそう言う松原さん。

それでも彼女は、何事もなかったようにロビーの中に消えて行った。






松「日本じゃ負けなしの野田茉希が唯一優勝逃したコンクールって、Aちゃんが優勝だったんだ?」

「…そう、みたいですね、」

松「だからってもう8年も前の事なのに。女って怖えー。」






負けた記憶は深く残る。
それは時に勝利よりもずっと深く。

私も、痛いくらいに知っている。






「…でも、間違ったことは何一つ言ってなかったですね。」

松「え?いいよ、あんなの気にしなくて。どうせ心理戦仕掛けてきてるんだって。」






"あとの三人は酷かったもの。ま、あなたもたいして変わらなかった気がするけど。"



その通りだ。

私は、敗退してもおかしくなかった。






「彼女は上手かった。私とは違って、ちゃんとあの舞台で自分の音楽を表現出来ていました。」

松「…まぁ、そうだけど、」






彼女の演奏は素晴らしかった。

断言してもいい。
野田茉希は必ずファイナルに進出する。






「私は…確実に彼女に負けていました。」






私は…。






「…っ、」






気づけば拳を握っていた。
ギシギシと音が鳴る程に。



悔しい。

彼女に負けたことでも、彼女に言われたことでもなく、自分に負けたことが一番悔しい。






「私、レッスン室行ってきます。」

松「え?ご飯行かないの?」

「いいです。松原さん行って来て下さい。」






松「本番前なんだからあんま弾きすぎんなよ?訳わかんなくなるぞ?」






ロビーを後にする時、背中から松原さんの忠告が聴こえた。

でも私の頭の中には、彼女の言葉がただぐるぐると回っていたんだ。






"ああやって指先だけ速く動かしてれば、凄いとでも言ってもらえたのかと思って。"

"あなたの演奏、ちゃんと聴いてるから。"

"楽しみにしてる。"






負けたくないーー

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laiz(プロフ) - うっちーさん» リラックス効果高けぇ、何だか懐かしい台詞ですね(*^^*)読み返して下さりありがとうございます。二人の出会いも懐かしい…(^-^)続編ではようやく二人の生活が戻ってきます。また癒しを沢山提供できるよう頑張りますので、是非覗きにいらして下さいm(_ _)m (2014年3月14日 21時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - 祐さん» ありがとうございます(*^^*)二人とも早く会いたくてウズウズしていますね^ ^やっと二人の生活が戻ってきます。続編作成いたしましたので、是非覗きにいらして下さいm(_ _)m (2014年3月14日 21時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
うっちー(プロフ) - ほんとこの小説は癒やされます。篤人さん風に『リラックス効果高けえ』です。最近また最初から読み直してます。「そういえば二人の出会いのきっかけは槙野だったなぁ」なんて懐かしく思ってます。続きを楽しみに待ってます。 (2014年3月13日 10時) (レス) id: 30fdb895e9 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ノクターン第13番鵺お疲れ様です(^^)お互い再会が待ち遠しい感じが伝わってきます☆更新大変だと思いますが、楽しみにしていますm(__)m (2014年3月13日 1時) (レス) id: dac0be65c1 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» こんばんは。楽しみに待つ内田さんと、それを気持ち悪がる母、ほっこりの回でしたね(*^^*)あー早く二人の再会が書きたい。でも、焦らすのも好きです^ ^笑"ななさん、このシリーズの結末まで是非お付き合い下さい!それまで楽しんで頂けるよう、頑張りますo(`ω´ )o (2014年3月12日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:laiz | 作成日時:2014年2月15日 20時

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