ノクターン第13番 ll

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麻「あれ？ついてないよ？」

篤「あー、ごめん。目と鼻と口だった。」

麻「………」

篤「ゴミかと思ったわ。」

「篤人くん、」






麻「………」






鏡の前で哀しそうに顔を撫でる麻也くん。

こうしてよく分からない彼等の戦いは、どうやら内田篤人に軍配が上がったようだ。






篤「さ、ご飯行こ。」

「いいの？麻也くん、」

篤「いいでしょ、あんなのどーでも。」






"じゃ、また。"と彼が呟いた時、咄嗟にその名を呼んで引き止めた。



どうしても伝えたいことがあったから。

まだ言っていないことがあったから。






「篤人くん、ありがとう。」

篤「…ふっ。それさ、毎回言うけどなんなの？俺なんかしましたっけ？笑」

「うん。お花とか、"そっちがな。"とか、他にも色々。たくさん。笑」

篤「あれ嫌がらせのつもりだったんですけどね、笑」






クスクスと重なる声が愛しい。
その照れ隠しの笑みが愛しい。



誰より成功を祈ってくれていた事を知っている。

貴方が居なければ、
きっとこんな世界は待っていなかった。






「篤人くんが来てくれなかったら、きっと駄目だった。」

篤「そんなことないでしょ。日本が誇る天才ピアニストなんだから。他を圧倒してたんだから。」

「…記事、見たの？」

篤「ええ。ヤホーでしっかりチェック済み。笑」






彼が嬉しそうに笑ってくれるのが嬉しい。
優しく頬笑んでくれるのが嬉しい。



誰より祝福してくれている事を知っている。

貴方と出会えて良かったなんて、
もう出会ってから何度同じ事を思ったのだろう。






篤「もちろんCDに…？」

「なる。笑」

篤「じゃ、サイン付きで。」

「うん。笑」






彼が導いてくれた新しい世界を、一生大切に守っていこう。

出来れば、少しその力も借りながら。






「篤人くんも頑張ってね。」

篤「は？」

「明後日、W杯出場が決まるかもって。」

篤「何それ、ヤホー情報？笑」

「うん。笑」

篤「ふっ。ま、ノクターン聴きますよ。」






そして、たまにはこの力も貸しながら、






篤「じゃ、飯行って来ます。時間に煩いから、長谷川さん。」

「うん。笑」






篤「また。」

「また。」






ふと眺めた窓の外は、雲一つない快晴だった。

そして確かに見つけた。
一ヶ月前にはなかった、キラキラ輝く光を。






ありがとう。

貴方のおかげで、新しい道が開けたよ。






この道は、

何処で貴方のそれと交わっているのだろうーー

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