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「………」
"篠崎Aはこうでなくちゃ。"
"俺の目に狂いはなかった。"
嬉しそうにそう言う松原さんの話もそっちのけで、彼の姿を必死に探す。
松「どうしたの?」
「…あ、いえ、」
でもやはり見当たらなくて、小さな小さな溜息を漏らした。
松「そういえばさ、客席にうっちーいたんだけど、笑」
「…え?うっちー?」
驚きのあまり聞き返せば、"ほら、日本代表の内田篤人。"とボールを蹴る真似をする松原さん。
松「なんか、一人だけ妙にかしこまったスーツ着てたから目立ってた。笑」
「………」
松「終わったらすぐ帰っちゃったけど、誰か知り合いでもいんのかな?まさかクラシック好きってわけじゃないでしょ?…あ、野田茉希の彼氏だったりして。うっちー趣味わりー、笑」
ぺらぺらと喋っている松原さんの横で、私の頬は緩んでゆく。
幻じゃなかったんだ、なんて、
来てくれたんだ、なんて、
コンクールだからスーツじゃなくていいのに、いつものあのスーツ着てきちゃって恥ずかしかっただろうな、なんて、
「……ふっ、」
愛しさばかりが、込み上げた。
「?」
背中から私を呼ぶ声がして振り返る。
そこには受付の女性が立っていて、"お花を預かっています"と言って大きなそれを私に差し出した。
松「コンクールなのに花束?しかもまだセミファイナルじゃん。笑」
顔が隠れる程の大きな大きな花束の中、小さなメッセージカードが添えられている。
"そっちがな。"
私のよく知る、綺麗な字。
松「なにこれ。…また嫌がらせ?」
ーーーvorwarts…
<頑張れ。>
<…なんなの急に。こっちの台詞なんですけど、笑>
<負けるな。>
<だから、そっちがね。笑>
<踏ん張れ。笑>
<そっちがな。笑>
ーー
「…いえ、とても温かい叱咤激励です。笑」
不思議そうに首を傾げる松原さん。
大事に大事に花束を抱きしめた私を、怪訝な顔で見つめていた。
「もう負けません。自分にも、誰にも。必ず優勝します。」
心地良い花の香りが鼻先を擽る。
ほんの少しだけ、本当に少しだけ、彼の香りが過った気がしたんだ。
きっと、気のせいじゃないーー
5月20日
セミファイナルの審査結果が発表された。
セミファイナル通過者 12名
No.58 篠崎A ファイナル進出ーー
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laiz(プロフ) - うっちーさん» リラックス効果高けぇ、何だか懐かしい台詞ですね(*^^*)読み返して下さりありがとうございます。二人の出会いも懐かしい…(^-^)続編ではようやく二人の生活が戻ってきます。また癒しを沢山提供できるよう頑張りますので、是非覗きにいらして下さいm(_ _)m (2014年3月14日 21時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - 祐さん» ありがとうございます(*^^*)二人とも早く会いたくてウズウズしていますね^ ^やっと二人の生活が戻ってきます。続編作成いたしましたので、是非覗きにいらして下さいm(_ _)m (2014年3月14日 21時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
うっちー(プロフ) - ほんとこの小説は癒やされます。篤人さん風に『リラックス効果高けえ』です。最近また最初から読み直してます。「そういえば二人の出会いのきっかけは槙野だったなぁ」なんて懐かしく思ってます。続きを楽しみに待ってます。 (2014年3月13日 10時) (レス) id: 30fdb895e9 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - ノクターン第13番鵺お疲れ様です(^^)お互い再会が待ち遠しい感じが伝わってきます☆更新大変だと思いますが、楽しみにしていますm(__)m (2014年3月13日 1時) (レス) id: dac0be65c1 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» こんばんは。楽しみに待つ内田さんと、それを気持ち悪がる母、ほっこりの回でしたね(*^^*)あー早く二人の再会が書きたい。でも、焦らすのも好きです^ ^笑"ななさん、このシリーズの結末まで是非お付き合い下さい!それまで楽しんで頂けるよう、頑張りますo(`ω´ )o (2014年3月12日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:laiz | 作成日時:2014年2月15日 20時