228.自慢の料理を ページ37
「ん？……ちょっと待って…！！ルフィさんこれ…一ケタ読み間違えてますよ！？」
「ん？」
全てを諦めた覇気のない顔で寝転がるルフィの横でブルックさんが改めて手配書を確認している。
「ホラ…10万…100万……1000万……」
徐々に上がっていくケタに固唾を飲む。
「あなたの懸賞金額…！！！15億Bですよ！！！！」
その度肝を抜く金額に皆んなの目玉が吹っ飛ぶ勢いで、高い空に絶叫が響いた。
………
サウザンドサニー号では、サンジ君が戻った事と懸賞金が上がった事を祝して宴が開かれていた。
「楽しそうで安心した。…ね、ソラさん」
『……ええ』
皆んなと離れた場所でお酒を飲む私の隣にサンジ君と同じ、綺麗な金色の長い髪を持つ女の人がいた。
『本当に楽しそうね』
その柔らかな羽のような雰囲気は、サンジ君やレイジュさんのお母さんだなって思わせる。
「サンジ君は大丈夫。ソラさんも粘らないで天国へ行かなきゃ」
『でも…』
「ここに居続けたらダメだよ。時間が経てば、どんな霊も悪霊化する」
ソラさんは泣きそうな顔をして、瞼を伏せた。
無理矢理送る事も出来るけど、それはしたくなくて料理を並べ終わったサンジ君を呼ぶ。
目の前に来くると小首を傾げて「酒か？」と私を見下ろした。
「サンジ君のお母さんに自慢の料理を一皿」
「は？」
「心配なんだって」
「何言って…る……」
目が徐々に見開かれて、私の隣を見ると全部を把握したのか凄いスピードでキッチンに消えていく。
しばらくお酒を飲みながら、サンジ君の昔の話を聞いているとバタバタとサンジ君が戻って来た。
「A、これ…」
「わー！リゾットだ！」
「体が…弱かったから…」
サンジ君には何も見えていないはずなのに、ちゃんとソラさんがいるところへ膝をつき料理を差し出した。
ソラさんは顔を覆い、しゃくり上げながら涙を零している。
『いただきます…っ』
サンジ君の顔は、子供の顔だった。ちゃんと、美味しいって言って貰えるかなって。
ソラさんはそんな心配を他所に、美味しいと何度も言ってリゾットを食べている。
「美味しいって」
「そうか…」
リゾットは、乾いて砂になると光と共に消えていった。
「母さん…ありがとう」
そのサンジ君の言葉にソラさんも消えていく。
「…行ったよ」
「……」
俯くサンジ君に手を伸ばして頭を抱き寄せる。
「よかったね」
小さな泣き声が聞こえなくなるまで、こうしていよう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1052人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
銀之助(プロフ) - 未だにお気に入り登録、お気に入り作者登録、ハートの通知などをたくさんいただき、ありがとうございます。この場を借りてお礼申し上げます。これからも長く楽しんで頂けたら、幸いです。 (2022年9月16日 22時) (
レス) id: 9c08df65af (このIDを非表示/違反報告)
銀之助(プロフ) - 香さん» コメントありがとうございます。かなりの長編だったのに全部読んでいただき、面白いと思っていただけて嬉しいです。キュンキュンをお届けできて一安心いたしました。 (2022年5月12日 21時) (レス) id: 9c08df65af (このIDを非表示/違反報告)
香 - 本当に好きすぎです…面白かったしキュンキュンしました！ (2022年5月9日 11時) (レス) @page48 id: 64178017ff (このIDを非表示/違反報告)
銀之助(プロフ) - たろ。さん» コメントありがとうございますー。一気読み嬉しいです！ありがとうございます。サンジくんの魅力を損なわず書けていたなら、本当に良かったです。 (2022年4月9日 22時) (レス) id: 9c08df65af (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - やばいめっちゃ泣いたし一気読みした…サンジくんたまんねぇなおい。 (2022年4月5日 3時) (レス) @page48 id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：銀之助
| 作成日時：2018年7月11日 21時
