218.クロの炎 ページ27
「あ、れ…？」
ふと感じた気配に涙が止まる。
サンジ君の胸に埋めていた顔を上げると、目が合った磯撫がフッと笑う。
「おや、気付きやしたか？」
磯撫の手に青い光が一つ一つ集まり、やがてバスケットボール程の青い火の玉が浮いている。
その気配とその炎を見間違えるはずがない。それは確かに…。
「クロ様の炎…」
「ご名答。ちょいと、クロと賭けをしてやしてね」
「え！？何それ！聞いてないよ！！」
「そりゃあ、アヤメには言ってねぇからなぁ」
アヤメちゃんがベシベシと尻尾で磯撫を叩く。
あまり痛くなさそうな攻撃を片腕で防ぎながら、磯撫は鋭い歯を見せて笑った。
「人間が頭首殿の死の運命を変えられるかどうか賭けてやした。賭けはクロの勝利でござんしたねぇ」
サンジ君に抱き締められたままの私の前に歩み寄ると、磯撫は恭しく膝をつき、手にある炎を私に差し出した。
その炎に手を伸ばすと、スッと炎を私から離す。
「クロが勝てば、この力を頭首殿のものに出来るよう…オイラが、その玉体に定着させる約束だ。…だが、覚悟して選んでくだせぇ。これを頭首殿のものにするという事の意味を」
「どういう事だよ…」
磯撫の言葉が理解出来ないサンジ君が抱き寄せる腕に少し力を入れながら問う。
でも、私にはその意味が理解出来ていた。
「私が八咫烏になるって事。入れてみないと、どうなるか分からない。神様の力は強大だ。理性を失った化け物になる可能性だってある」
「！？」
そうしたら…サンジ君や皆んなとも居られなくなる。
でも、ブルックさんの力を間借りし続ければ私は戦えない。
私がここで生きるには、クロ様の力で別の存在として、生まれ変わるしかない。
でも、どうなるか分からない恐怖が決心を鈍らせる。
「ルフィ！？」
「なに迷ってんだ！」
理解できないと言わんばかりに眉を釣りあげたルフィが、私の手をクロ様の炎の方へと無理矢理伸ばさせた。
「この炎はクロなんだろ！？だったら、Aが悲しんだり辛いと思うような事するはずがねぇ！」
指先に触れる炎は変わらず、私が知ってる温かさだった。
「絶対に大丈夫だ！」
そう言って顔いっぱいに笑顔をつくった。
炎と磯撫、アヤメちゃんを見て、ルフィ、ナミ、チョッパー、ブルックさん、キャロットの顔を順番に見て…最後にサンジ君の顔を見た。
サンジ君は目尻を下げて笑うと、一つゆっくりと頷く。
「磯撫、その炎…もらうよ」
「承知致しやした。後悔しなさんなよ」
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銀之助(プロフ) - 未だにお気に入り登録、お気に入り作者登録、ハートの通知などをたくさんいただき、ありがとうございます。この場を借りてお礼申し上げます。これからも長く楽しんで頂けたら、幸いです。 (2022年9月16日 22時) (
レス) id: 9c08df65af (このIDを非表示/違反報告)
銀之助(プロフ) - 香さん» コメントありがとうございます。かなりの長編だったのに全部読んでいただき、面白いと思っていただけて嬉しいです。キュンキュンをお届けできて一安心いたしました。 (2022年5月12日 21時) (レス) id: 9c08df65af (このIDを非表示/違反報告)
香 - 本当に好きすぎです…面白かったしキュンキュンしました！ (2022年5月9日 11時) (レス) @page48 id: 64178017ff (このIDを非表示/違反報告)
銀之助(プロフ) - たろ。さん» コメントありがとうございますー。一気読み嬉しいです！ありがとうございます。サンジくんの魅力を損なわず書けていたなら、本当に良かったです。 (2022年4月9日 22時) (レス) id: 9c08df65af (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - やばいめっちゃ泣いたし一気読みした…サンジくんたまんねぇなおい。 (2022年4月5日 3時) (レス) @page48 id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：銀之助
| 作成日時：2018年7月11日 21時
