222. 葬送歌 ページ31
「さてと！」
2人が消えていった海を見ていると、ナミが空気を変えるようにパンッと手を叩いた。
「A、私の服を貸してあげるからついてきて」
「うええ…ナミの服入るかなぁ」
「大丈夫よ！」
ナミが私の手を掴んで船内に入っていく。
扉が閉まるときサンジ君が「そういえば、ペドロはまだ寝てるのか？」という声が聞こえて胸がギリと痛んだ。
直ぐにナミから背中が空いた赤いブラウスとホットパンツを借りて、外に出ると
サンジ君は皆んなからペドロの事を聞いた後だったみたいだ。
「サンジ君…」
その背中は酷く小さく見えて、傍に行こうとしたら私よりも早くキャロットがサンジ君の背後に立って頭に手を乗せた。
「大丈夫！！大丈夫だよ！！サンジ！！ペドロは自分の意思でそうしたの！！責任なんか感じないで！サンジ」
明るい声。でも、なんだか自分に言い聞かせているようで胸が締め付けられる。
「ゆティア達がモコモ公国を救ってくれたから、恩返しに来たんだよ！！ペドロがいなかったら、あの時みんな死んでた…！だがら…！！」
明るかった声は、みるみる震えて涙声になっていく。
「『ありがとう』って言ったげで…！！！これでよかったんだがら…！！！」
サンジ君の頭を撫でながら、大粒の涙を零してしゃくり上げるキャロットと頭にサンジ君の手が乗った。
「わかってる。どういう男かは」
穏やかな表情だったけど…どこか涙を堪えるような声と、夜明け前の空に響くキャロットの悲痛な泣き声に私の視界も歪む。
「あ！わたあめ雪…」
「ナワバリの出口が近いのでは！？」
空からふわふわと雪が降ってくる。
その雪の中を飛んで、サンジ君とキャロットの近くへ降り立った。サンジ君の胸に顔を埋めていたキャロットが大きな瞳を潤ませて私を見るから、涙を拭って笑う。
「A…まだ、あれ出来る？歌ってくれる？」
「力の間借りは出来ないけど、魂を送る事はまだ出来るみたい」
「じゃあっ…ペド…ペドロを…っ」
「うん。空へ送ろうね」
私の歌声にブルックさんのギターの音がいつの間にか重なっていた。舵はナミが持ってるみたいだ。
上からは雪が海が所々光って淡い光の玉が昇り、世界を彩っていく。
この辺りを漂っていた魂が上がっていくのは見えたけど、その中にペドロさんの姿は見つけられなかった。
ペドロさんらしく自力で空へ行ったのかもしれない。
「綺麗だな」
「う゛ん…」
連れ閻魔は出来ないけど、貴方の遺志を継ぐよ。
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銀之助(プロフ) - 未だにお気に入り登録、お気に入り作者登録、ハートの通知などをたくさんいただき、ありがとうございます。この場を借りてお礼申し上げます。これからも長く楽しんで頂けたら、幸いです。 (2022年9月16日 22時) (
レス) id: 9c08df65af (このIDを非表示/違反報告)
銀之助(プロフ) - 香さん» コメントありがとうございます。かなりの長編だったのに全部読んでいただき、面白いと思っていただけて嬉しいです。キュンキュンをお届けできて一安心いたしました。 (2022年5月12日 21時) (レス) id: 9c08df65af (このIDを非表示/違反報告)
香 - 本当に好きすぎです…面白かったしキュンキュンしました！ (2022年5月9日 11時) (レス) @page48 id: 64178017ff (このIDを非表示/違反報告)
銀之助(プロフ) - たろ。さん» コメントありがとうございますー。一気読み嬉しいです！ありがとうございます。サンジくんの魅力を損なわず書けていたなら、本当に良かったです。 (2022年4月9日 22時) (レス) id: 9c08df65af (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - やばいめっちゃ泣いたし一気読みした…サンジくんたまんねぇなおい。 (2022年4月5日 3時) (レス) @page48 id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：銀之助
| 作成日時：2018年7月11日 21時
