220.クビ ページ29
毛布が体から落ちないようにおさえながら磯撫に駆け寄って黒い目を見つめるが、どうやら冗談ではなさそうだ。
「えっえっ、クビ？」
「もうアンタは "最弱" と呼ばれる一族の力は使えねぇでしょう」
まさかのクビ宣告にクッソ慌てる。
予想だにしない展開に皆んなも目を丸くして私達を見ていた。ルフィはなんか知らないけど、大口を開いて肩を揺すって笑っている。
「いやほら、えっ、そしたら解散じゃん。古からの歴史あるチーム解散じゃん」
「ご安心を。Aは知らねぇでしょうが、アンタには弟がいる。アイツは筋がいい。それに、ケツの青い餓鬼だがオイラ達の上に立つ気でおりやすよ」
「えー…弟なんて知らなーい…」
私があのアパートにいる間に産まれてたって事？
何もついていけてない私を置いて、磯撫とアヤメちゃんが船縁に立った。何も話は済んでいないのに、向こうは終わったオーラが凄い。
「Aはもう、頭首じゃないんだ。責任とか役割とか、そんなの忘れて自由に生きなよ。Aの世界はここだ。好きな所にいればいい」
「あァ、頭首なんざ面倒な肩書きは捨てて、惚れた男にでも守られてた方が丁度いいってもんだ」
磯撫の言葉に顔から湯気が出そうだ。
あああああ皆からの視線が痛い！恥ずかしい！！ヒィッ！！
いや、そもそも私断っちゃったし…。俯く私を見た磯撫がニタリと笑う。
「あー、兄さん。オイラから良い事を教えてしんぜやしょう」
「良い事？」
「炎は口ほどに物を言う」
やけにウキウキと楽しげに弾んだ声で、磯撫はサンジ君に助言する。何が何だかわからないと首を傾げるサンジ君を見る磯撫は、ますます笑みを深めてこう言った。
「Aの頬に触ってみな」
「は！？ほっぺた…！！」
声がひっくり返る程動揺する私の頬にサンジ君の手が滑る。
すると、その触れたところからゆらりと出る淡い淡い炎がサンジ君の手を包むように広がっていく。
驚いて頬に触れる手を引き離そうと伸ばした手は、サンジ君の空いた手で止められた。
「え、どうなって…」
掴まれたところから、同じように炎が溢れてサンジ君の手首から腕へと炎は動く。
「麦わらの旦那、Aに触ってみなせぇ」
「Aにか？」
ルフィは、わしっと私の頭に手を乗せたけど何も起きなかった。
でも。サンジ君が触れるところは求めるようにユラユラ動いている。炎は口ほどに物を言う…つまり…これは……。
「なるほどな」
サンジ君の目にも、ゆらりと熱が揺れた。
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銀之助(プロフ) - 未だにお気に入り登録、お気に入り作者登録、ハートの通知などをたくさんいただき、ありがとうございます。この場を借りてお礼申し上げます。これからも長く楽しんで頂けたら、幸いです。 (2022年9月16日 22時) (
レス) id: 9c08df65af (このIDを非表示/違反報告)
銀之助(プロフ) - 香さん» コメントありがとうございます。かなりの長編だったのに全部読んでいただき、面白いと思っていただけて嬉しいです。キュンキュンをお届けできて一安心いたしました。 (2022年5月12日 21時) (レス) id: 9c08df65af (このIDを非表示/違反報告)
香 - 本当に好きすぎです…面白かったしキュンキュンしました！ (2022年5月9日 11時) (レス) @page48 id: 64178017ff (このIDを非表示/違反報告)
銀之助(プロフ) - たろ。さん» コメントありがとうございますー。一気読み嬉しいです！ありがとうございます。サンジくんの魅力を損なわず書けていたなら、本当に良かったです。 (2022年4月9日 22時) (レス) id: 9c08df65af (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - やばいめっちゃ泣いたし一気読みした…サンジくんたまんねぇなおい。 (2022年4月5日 3時) (レス) @page48 id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：銀之助
| 作成日時：2018年7月11日 21時
