176.クロの願い ページ34
クロside
ケーキ作りの手伝いをするAの手元を見ながら、十数年前にAと出会った時の事を思い出していた。
「お菓子!!」
『……』
古びた社にAは来た。
3歳程度のAは、挨拶もなく私に菓子を突き出してきたのだ。
『あの一族の者か…。そんな物で私を己の配下にしようとでも』
「友達!友達になろ!」
全く会話をさせてくれないAは、毎日のように私に菓子と土産話を持って遊びに来た。
永い時を生きた私と違い、見る物もその思考も語る言葉も幼かったが何故かとても新鮮に感じたのを覚えている。
私の名前を覚えられなかったAにクロと呼ばれるようになったのも、そう感じるようになった頃だった。
「クロさまぁっ…!」
あの日から2年。そんな穏やかな毎日は続かなかった。
Aとの毎日を心地よく思うようになってから、しばらくして私の社は人間の手によって取り壊されたのだ。
人に忘れ去られる事、そして社が無くなる事…それは神の死を意味する。
『何を嘆く。私は必要とされなくなった…それだけの事』
痛みもない。ただ、身体が景色と同化してゆくだけ。
「私の体を住処にすればいいよ!」
『己を過信するな。お前のような小童が私の力を扱えるわけがない』
「練習するもん!クロ様消えちゃヤダァッ…!」
ヤダヤダとしか言わないAに折れた私は、社からAの身体を住処にした。
私を必要としてくれる存在の側に居たいと…神でも、そう思ってしまうものらしい。
「クロ様、あそこのサラマンダーがサボってるから注意しに行ってー」
『あ、あァ…わかった』
「珍しいね、ぼーっとしてるなんて」
私をその身体に宿す事で、Aは妹を野良犬から守る事が出来たが…居場所を失った。
私が居なかったときは、多少浮いていたが人並みの人間として過ごせていた。だが、私を宿してからは、それも出来なくなった。
『考え事だ』
「考え過ぎると禿げるよ?」
Aの苦難の始まりは私だった。周りの子供からいじめられた事も、母親に殺されそうになった事も全て。
だというのに、Aの中に後悔は無かった。私の力を使いこなす為に必死に努力していた。
そして、今や共に戦うまでに成長した。
「ぎゃああああ〜〜♡♡」
Aの限界は近い。どこまでその身体や命がもつのか私にもわからない。
「なんだろ、叫び声なんて。行ってみようか」
サンジ…無力な神の願いだ。
Aを死なせないでやってくれ…。
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銀之助(プロフ) - ぽんぬさん» そう言って頂けると頑張ろうと思えます。ありがとうございます。デジモンのアプリやってる場合ではないですね!!近々更新致しますので今しばらくお待ちを!!楽しい作品になるように頑張ります!! (2018年7月5日 21時) (レス) id: a47038dbdc (このIDを非表示/違反報告)
ぽんぬ - わ〜!お返事ありがとうございますっ!!それを聞いて安心しました( ˘ω˘ )ほんとに毎日続きが更新されるのを楽しみにしてます!素晴らしい小説をありがとうございます!(><) (2018年6月30日 20時) (レス) id: d30ebc51ac (このIDを非表示/違反報告)
銀之助(プロフ) - ぽんぬさん» 上から目線なんてそんな事ないですよ!コメントありがとうございます!どストライクだったなんて、とても嬉しいです。私も、ああいう関係性が好きなのです。原作に溶け込むように話が書けていて安心しました。少し停滞しておりますが、最後まで頑張ります!! (2018年6月28日 7時) (レス) id: a47038dbdc (このIDを非表示/違反報告)
ぽんぬ - すっごい上から目線になってしまい、申し訳ないです…orz (2018年6月28日 0時) (レス) id: d30ebc51ac (このIDを非表示/違反報告)
ぽんぬ - 突然のコメント失礼します!サンジの夢主に対する接し方がもうどストライクで一気に全部読ませていただきました…( ˘ω˘ ) 原作にも綺麗に話が溶け込んでいてなんの違和感もなく、読むことが出来ました!是非最後まで続けて欲しいです!!更新待ってます(><) (2018年6月28日 0時) (レス) id: d30ebc51ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:銀之助 | 作成日時:2017年12月25日 21時