149.踏みにじって来い ページ3
これじゃあ、ビッグ・マムもその部下達も死にはしないだろう。悠々と脱出してハッピーエンドとはいきそうにない。
落胆したため息をついた磯撫が、私を抱えたまま岩陰に向かって降りていく。
「お嬢、下ろしやすぜ」
「ありがと…」
岩に背中を預けて一つ深く息を付こうとしたけど、息よりも先に出て来たのは咳と血だった。
心配する2匹は、恐らく…自力でこの世界に来てくれたんだろう。
「自力で来たんじゃございやせんよ」
「え?」
私の考えを見透かしたように磯撫が否定した。
だとしたら、なんでここに2匹はいるんだろう。私の力の効力はもう切れてるのに。
「仲間がオイラとアヤメをここに残してくれやした。お嬢が心配だとよ」
「お嬢に贈り物だよ」
アヤメちゃんの前に淡く光る球体がふわりふわりと浮かんでいる。
温かい、暖炉の火のような光だった。
「これで、もう少しだけサンジと居れるだろ?」
仲間達の温かな気持ちに涙が溢れて声が詰まる。
その光は引き寄せられるように私の胸に潜っていき、だんだん身体に力が入るようになってきた。
その腕で2匹を抱き寄せてポンポンと頭を撫でる。
お母さんには愛されなかったけど、私は幸せだと思う。
「磯撫とアヤメちゃんはジェルマの援護に行って」
「でも、お嬢…」
「お嬢、あの国王はそんなの望んじゃいやせんよ」
それは、わかっている。
借りをつくる事は、あの人達のプライドを踏みにじる事になる。悪の一族でも、誇りはあるだろう。それでも、サンジ君が助けると決めた人達だ。
全力は尽くしたい………というのは建前だ。
「サンジ君の自尊心踏みにじっといて、自分達だけ綺麗に終わらせてたまるかい。少し踏みにじっても罰は当たらんでしょ」
私の発言に2匹が同時に吹き出して、私から離れると腹を抱えて崩れ落ちながらゲラゲラと笑い始めた。
アヤメちゃんは、引き笑いをするクセがあるから呼吸困難に陥っているようにも見える。
「随分とイイ性格になりやしたな、お嬢…っ」
「そう来るかー!お嬢最高!」
アヤメちゃんがバシバシと私の肩を叩く。
まだ、笑ってるけど…そんなツボだった?笑いの沸点低くない?
「どうせ、サンジ君とルフィがレイジュさん助けてるから、手を出してるしね。頼んだよ」
「そういう事なら、お受けしやしょう」
困ったように笑う磯撫は肩を竦めた。
「ありがとう。気を付けてね」
「お嬢もね!」
空へ飛び上がる2匹を少しの間見送って、黒い翼を伸ばした。
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銀之助(プロフ) - ぽんぬさん» そう言って頂けると頑張ろうと思えます。ありがとうございます。デジモンのアプリやってる場合ではないですね!!近々更新致しますので今しばらくお待ちを!!楽しい作品になるように頑張ります!! (2018年7月5日 21時) (レス) id: a47038dbdc (このIDを非表示/違反報告)
ぽんぬ - わ〜!お返事ありがとうございますっ!!それを聞いて安心しました( ˘ω˘ )ほんとに毎日続きが更新されるのを楽しみにしてます!素晴らしい小説をありがとうございます!(><) (2018年6月30日 20時) (レス) id: d30ebc51ac (このIDを非表示/違反報告)
銀之助(プロフ) - ぽんぬさん» 上から目線なんてそんな事ないですよ!コメントありがとうございます!どストライクだったなんて、とても嬉しいです。私も、ああいう関係性が好きなのです。原作に溶け込むように話が書けていて安心しました。少し停滞しておりますが、最後まで頑張ります!! (2018年6月28日 7時) (レス) id: a47038dbdc (このIDを非表示/違反報告)
ぽんぬ - すっごい上から目線になってしまい、申し訳ないです…orz (2018年6月28日 0時) (レス) id: d30ebc51ac (このIDを非表示/違反報告)
ぽんぬ - 突然のコメント失礼します!サンジの夢主に対する接し方がもうどストライクで一気に全部読ませていただきました…( ˘ω˘ ) 原作にも綺麗に話が溶け込んでいてなんの違和感もなく、読むことが出来ました!是非最後まで続けて欲しいです!!更新待ってます(><) (2018年6月28日 0時) (レス) id: d30ebc51ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:銀之助 | 作成日時:2017年12月25日 21時