148.磯撫とアヤメ ページ2
その轟音の直後、地鳴りのような音を立ててホールケーキ城が傾き出した。
誰の仕業なのかわからないけど、逃げ出すには今しかない。
でも、体に力が入らなかった。
「お嬢!」
「え…?」
私を磯撫が横抱きにして浮き上がり、更に落ちてくる瓦礫を赤い鮮やかな炎が一瞬にして消し炭にする。
「なんで…」
「話は後だお嬢!アヤメ、オイラはお嬢を運ぶから援護を頼むぜ!!」
「任せな!信じて飛べよ!」
瓦礫をアヤメちゃんが破壊して、その後を磯撫が追っていく。
まるで映画の最後で遺跡が崩壊していくシーンみたいだ。
映画だと、後はもうハッピーエンドなんだけど…まだわからない。
「逃さん!!!」
磯撫に狙いを定めたカタクリの腕から伸びる餅が、降り注ぐ瓦礫をものともせず打ち砕きながら、真っ直ぐに向かってくる。
私が炎を放つ為に腕を持ち上げようとしたが、それを止めるように磯撫が私を片手で抱え直した。
「アヤメ、頼む」
「注文が多いなぁ」
磯撫の丸くて黒い目が鮮やかな水色に一瞬光り、脚を後ろに振り上げた。
「心配性な兄さんの預かりもんだ。手を出さないで頂きやしょう」
磯撫の這うような低い声。
大きく脚を蹴り上げると、その蹴り押し出されるように大波が突如現れカタクリを飲み込もうと轟音を立ててうねる。
一瞬、焦った顔を見せたカタクリだったが頭上にあった足場に移り波を寸前のところで回避していた。
「見えた未来と違う?」
アヤメちゃんの幻術…。
なるほど、カタクリに別の未来を見せて攻撃の反応を遅らせたのか。
クスクスと笑うアヤメちゃんを見て、カタクリが苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。
「目に見えるモノを追っかけるなんてぇのは、犬っころにも出来ますぜ旦那?」
「目に見えるものなんて、私達には何の意味も無いんだよ」
アヤメちゃんが口から煙を吐き出す。
きっと、幻術をまた使ったんだろう。私達の姿はもう彼らには見えていないはず。
「磯撫…っ、どうなるか…見ておきた、い…」
「…真面目だねぇ、頭首殿は」
ホールケーキ城より高い位置まで飛んだ私達は、安全なところで崩れ落ちる様子を見た。
ビッグ・マムが死ぬなら見届けて、皆んなに伝えなきゃ…。
「あれっ!?お嬢、城が…っ」
「嘘でしょ…」
「この世界の能力者ってのは、予想がつかねぇな…」
ホールケーキ城が本当にホールケーキになっている。
硬いものが崩れるガラガラとした音は、嘘のように消え去って甘い匂いが漂っていた。
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銀之助(プロフ) - ぽんぬさん» そう言って頂けると頑張ろうと思えます。ありがとうございます。デジモンのアプリやってる場合ではないですね!!近々更新致しますので今しばらくお待ちを!!楽しい作品になるように頑張ります!! (2018年7月5日 21時) (レス) id: a47038dbdc (このIDを非表示/違反報告)
ぽんぬ - わ〜!お返事ありがとうございますっ!!それを聞いて安心しました( ˘ω˘ )ほんとに毎日続きが更新されるのを楽しみにしてます!素晴らしい小説をありがとうございます!(><) (2018年6月30日 20時) (レス) id: d30ebc51ac (このIDを非表示/違反報告)
銀之助(プロフ) - ぽんぬさん» 上から目線なんてそんな事ないですよ!コメントありがとうございます!どストライクだったなんて、とても嬉しいです。私も、ああいう関係性が好きなのです。原作に溶け込むように話が書けていて安心しました。少し停滞しておりますが、最後まで頑張ります!! (2018年6月28日 7時) (レス) id: a47038dbdc (このIDを非表示/違反報告)
ぽんぬ - すっごい上から目線になってしまい、申し訳ないです…orz (2018年6月28日 0時) (レス) id: d30ebc51ac (このIDを非表示/違反報告)
ぽんぬ - 突然のコメント失礼します!サンジの夢主に対する接し方がもうどストライクで一気に全部読ませていただきました…( ˘ω˘ ) 原作にも綺麗に話が溶け込んでいてなんの違和感もなく、読むことが出来ました!是非最後まで続けて欲しいです!!更新待ってます(><) (2018年6月28日 0時) (レス) id: d30ebc51ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:銀之助 | 作成日時:2017年12月25日 21時