酔った勢いでやったかも【snr】

thirteenth shake ページ13

.



飛び込んだ先はセンラの胸の中で、彼は表情を取り繕っていたが苦悶の色が見て取れた。

「痛かったでしょ」

「……漫画みたいに上手くはいかんな」

「っあはは」

手馴れてそうなのに、ただの格好つけか。抱く時も戸惑ってたのかもな。見たかった。

「ねえ、センラは覚えてるの？私を抱いた時のこと」

ぶっとセンラが噴き出した。わかりやすい動揺の仕方である。

「いやいやいや……え？それ聞きます？ていうか何が聞きたいんですか？」

「覚えてるのかなって。私は覚えてないからもし覚えてるんならずるくない？」

「ずる、ずるいってなんですか？何、今になって俺との夜を惜しんでるん？」

「その言い方なんかき……まあいいや、そんな感じ」

「今何言いかけたか分かったぞ分かったからな」

「あはは」

笑う私を見たセンラが一緒に笑みを零した。多分許された。期待した通りに。

今ならわかるけど、告白される前からセンラは私の中で割と“あり”だったんだと思う。

「センラ優しいよね」

「まあな。好きやろ？」

「うん」

素直に頷いてみせるとセンラの顔が少し赤くなった。

え、かわいいな。照れてる。

「かわいいじゃん」

「うっせ。本物(ほんまもん)のかわいい奴に言われたないわ」

「……え？」

「あ？」

天の邪鬼を過ぎて不機嫌に近い声音で聞き返される。この反応、もしかしてさっきの発言は口説いてたんじゃなく無意識だったのか。

無意識であんなこと言うの？やばいって。

頬が急激に熱くなってセンラの顔を見られなくなる。すると上機嫌なセンラの声が降ってきた。

「なんやお前も照れとるやんけ！かわいい言うたくらいで真っ赤なってかわい……待って俺さっきなんて言うたっけ……」

無言を挟んで、センラが身動ぎする。どうやら気付いたらしい。恥ずかしがってるってことは本当の本当に本心……。

照れ合ったままどれくらいの時間が経ったか。数秒だったかもしれないし、数十秒だったかもしれない。一分を超えていたかも。でも、そんなのはどうでもよくて。

「今度はさ、どっちも酔ってない時に……してね」

「……そういうとこやぞ、お前」

どういうことかとセンラを見上げれば、そこで目が合った。

こちらを見つめる熱っぽい瞳の求めるものが私も欲しくなって、瞼を閉じれば、唇が重なった。


お酒のほんのり香る口付けを、私はきっといつまでも覚えている。

Prolog:shaker→←twelveth shake

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す