episode 63 ページ19
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目が覚めて最初に見たのは既視感のある天井だった。眠る前のことを思い出すまでに少し時間がかかる。
……そうだ、私は……眠らされたんだ。坂田さんに。
体を起こして周囲を見回す。坂田さんの屋敷の一室だろうか。正面に襖があって、それ以外の面は壁で閉じられている。なんだか不安になる造りだと感じた。
体を拘束されているわけでもないのに、ここから出られる気がしない。
「おはよ」
まるで見計らったようなタイミングで坂田さんの声が聞こえた。襖に坂田さんらしき影が透けている。
「坂田さん……」
「入ってもええ？」
「……どうぞ」
そこ聞くんだ、と思いながら返事をすると、襖が開いて坂田さんが入ってくる。
ほとんど黒に近い濃紺色のスーツと片側だけ上げたヘアスタイルが今日も似合っている。こんな状況だからか、会って間もなかった頃のように、別世界の住人に見えた。
坂田さんは私の前にすとんと座って、表情を微かに和らげる。
「お腹空いとる？何かいる？」
「いえ、特に……」
「そうか。何かあったらいつでも言ってな。その辺におる奴が対応するから」
「ありがとうございます」
他愛ない、と言っていいかわからない、会話。坂田さんはいつも通りだった。近寄りがたい無表情が私には少し柔らかくなるところとか、部下には冷たい声音の優しさとか……いつも通りすぎて、つい思い違いをしてしまった。
「坂田さん。どうして私をここに連れてきたんですか？それも眠らせて……。何かお話があるなら聞きます。なので、いつもの場所で話しませんか？」
「…………」
坂田さんは沈黙した後、にこっと笑った。
今まで見たことのない満面の笑み――その裏に脅迫のような圧を感じた。
「こっから出したら閉じ込めた意味ないやん」
「……え」
「そもそも連れてきたんやなくて誘拐や。大学にも行かせへんよ。大人しくしてたら何もせぇへんから安心しぃや」
いつも通りの口調、だけれど坂田さんの纏う雰囲気は恐ろしいほどに暗く鋭い。重たく張り詰めた空気が私の肺を圧迫する。自然にできていた呼吸が乱れていく。
強硬手段に出た相手に話が通じるわけがなかった。慎重にならなくてはいけなかったのに。
「ここに、おってな」
手足を縛る縄も繋ぎ止める枷もない。優しい声色で紡がれた言葉だけで、私はこの部屋に拘束されてしまった。
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む-む(プロフ) - 更新ありがとうございます！いつも楽しく読ませてもらってます…！今後も応援しております！ (2月5日 22時) (
レス) id: e45905575c (このIDを非表示/違反報告)
蟹汁(プロフ) - 最新話とても楽しみにしておりました…！更新嬉しいです！ (1月9日 13時) (レス) @page19 id: 1d876901a1 (このIDを非表示/違反報告)
yume(プロフ) - すごくドキドキする楽しい作品です！更新楽しみにしてますー！ (10月28日 13時) (レス) @page18 id: af9fca39eb (このIDを非表示/違反報告)
きゆか(プロフ) - 更新楽しみにしてます…！いつか続きみたいなって思ってます…！！ (2022年10月31日 0時) (レス) @page18 id: 1051f9e52c (このIDを非表示/違反報告)
みこ - 更新頑張ってください！大好きなお話です！ (2022年10月22日 16時) (レス) @page18 id: 2aca8cdc1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ノア
| 作成日時：2020年8月27日 14時
