episode 62 ページ18
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振りほどこうとしたけれど力では敵わず、重ねられるキスを為す術なく受け入れるほかない。中までは許さないと固く決めていたのに、こちらを覗き込む内面を見透かしたような静謐の真紅の奥に熱が灯っているのを見た瞬間「待って」と言いかけてしまって、舌の侵入を許してしまった。
手首を押さえつけながら神経のあるようなどうしても敏感になるところの皮膚をやんわりとなぞる指先にびくりと体を揺らしてしまい、恥ずかしさに目を瞑ったら、やさしく愛するような甘さをもってかき乱される口付けにあっという間に溺れる。
一つの感覚を閉じたら他の感覚が敏感になるらしいと思い出して、水面に顔を出すような思いで瞼を上げると、凪いだ真紅の奥の仄暗い熱に焦がされて、それ以上開けていられなかった。
息が苦しい。
ふっと唇が離れて、坂田さんの息も少し上がっていた。何を考えているのか、私をじっと覗き込む透明な瞳を見つめ返す。
坂田さんが怪訝そうに眉を顰めた。
「逃げようとせえへんの？」
「え……あー、さっきやって無理だったので」
「諦め早すぎん？」
「あはは」
今は坂田さんのことを理解したくて。そんな本心は、気持ちに応えられないのに伝えてはいけないと笑顔で隠した。
なんとなく手に力を込めてみて、やっぱりビクともしなかった。
「おらんくならへんよな」
か細い声がした。坂田さんは表情を隠すように深く俯いている。
「あの時捨てられへんかったやん。今更どこにも行かんでや」
……これは、うらたさんとのことを言っているのだろうか。まさか盗聴とかではないはずだから……私が狙われてた時に私の周辺を見守ってくれてて、そのうちにうらたさんが私の好きな人だって気付いたんだろう。
俺を捨てな、と坂田さんに言われたあの時は坂田さんを捨てるなんてできなかった。今だって本当はしたくない。――でも。
言わなくちゃ私は、進めない。
「坂田さん。私……」
先の発言を遮るように口を布のようなもので塞がれた。驚いて息を吸ってしまった途端にくらりと視界が揺れる。
意識を手放す寸前、坂田さんの独白が聞こえた気がした。
「……結局、俺はこういうことしかできんのや」
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む-む(プロフ) - 更新ありがとうございます！いつも楽しく読ませてもらってます…！今後も応援しております！ (2月5日 22時) (
レス) id: e45905575c (このIDを非表示/違反報告)
蟹汁(プロフ) - 最新話とても楽しみにしておりました…！更新嬉しいです！ (1月9日 13時) (レス) @page19 id: 1d876901a1 (このIDを非表示/違反報告)
yume(プロフ) - すごくドキドキする楽しい作品です！更新楽しみにしてますー！ (10月28日 13時) (レス) @page18 id: af9fca39eb (このIDを非表示/違反報告)
きゆか(プロフ) - 更新楽しみにしてます…！いつか続きみたいなって思ってます…！！ (2022年10月31日 0時) (レス) @page18 id: 1051f9e52c (このIDを非表示/違反報告)
みこ - 更新頑張ってください！大好きなお話です！ (2022年10月22日 16時) (レス) @page18 id: 2aca8cdc1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ノア
| 作成日時：2020年8月27日 14時
