episode 57 ページ13
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振り返ってその人の姿を目に留めると、さらに涙がこみ上げる。
「うらたさん……っ」
「……！」
僅かに目を見開いたうらたさんは早足で近付いてきて、片腕を私の後頭部にまわし、胸に押し込めるようにして抱きしめた。
「マジで泣いてんのかよ。……悪かったよ」
「っごめ、んなさい、勝手に出てきて」
「わかってる。もう喋んな」
そっと背中に触れたもう一つの手がぽんぽんと優しく寄り添ってくれる。
感情の波が収まるにつれ、少しずつうらたさんの心臓の音が聞こえてくる。普段を知らなくてもドキドキしているんだとわかるくらいには早いその音は、これ以上ない安堵をくれた。
多分わざと聞かせてるんだ。言葉がなくても気持ちが伝わるように。
私も伝えたいのに、今度は嬉しくて溢れる涙が言葉の邪魔をする。
だからせめて、しがみつくようにうらたさんの体を両腕で捕まえた。
離れたくない。放したくない。
「うらたさ……」
大好きを告白するような声で名前を呼ぶ。そのまま言えばよかったのだけれど、上手く言葉にできずに。
お互いわかっていた。それでも言葉をあげたかったし、ほしかった。けれど口より早く体が動いた。
そうして私たちは、人目を避けた路地裏で、世界に隠れてキスをした。
□■□
うらたさんの家へ連れられ、数十人は余裕で収まりそうなリビングの、ふかふかなソファに二人で腰掛ける。ソファもとても大きいけれど、自然と身を寄せ合っていた。
「知ってんだろうけど、アメリカに戻ることにした。そろそろ次の映画の撮影始まるし」
「次はどんな映画なんですか？」
「日本でやってたのとは全然違うやつ。ほぼアクションだな。内容はまだ公開前だから言えねえけど」
「そうですね、すみません。楽しみにしてます。ハリウッドのうらたさんはまだ見たことがないので」
「ああ？見とけよ」
「だって本人と会えてたので……日本のは見てました。すごく良かったです」
笑顔でそう伝えると、不満そうな顔つきが和らいで綻んだ。
右の瞼の辺りに口付けが落とされて、視線が交わり、重なる唇。
吐息の零れた後、うらたさんはふと身を離した。
「こっからが本題」
私の片手を掬うように取って、その甲に唇で触れる。宝石のような翠緑の瞳は私だけを見つめている。
「お前をアメリカに連れて帰りたい。俺と一緒に来ねえか？」
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む-む(プロフ) - 更新ありがとうございます！いつも楽しく読ませてもらってます…！今後も応援しております！ (2月5日 22時) (
レス) id: e45905575c (このIDを非表示/違反報告)
蟹汁(プロフ) - 最新話とても楽しみにしておりました…！更新嬉しいです！ (1月9日 13時) (レス) @page19 id: 1d876901a1 (このIDを非表示/違反報告)
yume(プロフ) - すごくドキドキする楽しい作品です！更新楽しみにしてますー！ (10月28日 13時) (レス) @page18 id: af9fca39eb (このIDを非表示/違反報告)
きゆか(プロフ) - 更新楽しみにしてます…！いつか続きみたいなって思ってます…！！ (2022年10月31日 0時) (レス) @page18 id: 1051f9e52c (このIDを非表示/違反報告)
みこ - 更新頑張ってください！大好きなお話です！ (2022年10月22日 16時) (レス) @page18 id: 2aca8cdc1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ノア
| 作成日時：2020年8月27日 14時
